9月21日、愛知芸術文化センター12階アートスペースGにて、パブリック・プログラム クロス・キーワード「79のキーワードの裏側」を開催しました。あいちトリエンナーレ2013芸術監督の五十嵐太郎さん、キュレーターの飯田志保子さん、アーキテクトの武藤隆さん、コミュニティ・デザイナーの菊池宏子さんを迎え、アシスタントエデュケーターの福岡寛之さんを進行役に、79のキーワードがどのように誕生し、どう機能しているかについて話されました。
79のキーワードとは、トリエンナーレに関わるスタッフが、今回のテーマ「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」から想起してまとめたことばです。クロス・キーワードの内容に反映したり、ベクトルワークショップで用いたり、キッズトリエンナーレでは参加者が言葉を連想していくプログラムに活用したりと、来場者と共に作品やテーマを考えるためのツールとして活用しています。
このキーワードが生まれた背景は「昨年スタッフの顔合わせがされた際にテーマをどう考えるか議論されたことがきっかけ。私の呼びかけにより寄せられた380余りのキーワードの中から78個を選び、最後の一つは来場者に考えていただく仕掛けになっている」(菊池さん)、「会期が79日間なので、1日1キーワードで何かプログラムを組むのもいいのではという話もされていた」(武藤さん)そうです。
進行役の福岡さんが「このキーワードは来場者と作品、被災地と愛知をつなげる点で役立っている。鑑賞後のちょっと重い気持ちを整理できる」と、クールダウンオアシス(アートスペースHで9/1~29に開催)に訪れた来場者に、壁に大きく描かれたフロアマップの作品に該当するキーワードを貼っていただく中で、来場者から得られた反応について話すと、「キーワードありきで作家や作品が選ばれたわけではないが、作品を見るための入口としてキーワードが役立つ」(飯田さん)という意見が。
「被災地と愛知をつなぐことが今回のトリエンナーレの重要なポイントであり、そのためにもこのツールが役立っているのでは」という福岡さんの指摘に「震災をテーマにしたのは、トリエンナーレは愛知だけのものではなく世界との窓口だから。被災地と被災地でない場所を、アートならつなげられると思った」と五十嵐さん。飯田さんからは「テーマを英訳した"Awakeing"の"覚醒させる"という意味の方が適切。震災だけではなく他国の危機的状況をどう考えるかがテーマ。日本では、来場者は答えを見せてもらうために展覧会に来るが、それでは思考停止になりがち。今回はそうではなく、見て一緒に考えるためにもこうしたツールが必要」と話されました。
後半では、79のキーワードの機能である「つなぐ」ということから、人と場所をどうつなげていくかについて議論されました。「クールダウンオアシスのような場所が、継続的にあることが大切」(武藤さん)、「地域の人が自分たちの祭りと思わないと、県の事業でも継続していかない。3年後は違うテーマであいちを見直していくことになるが、残るべき人は残り、変わるところは変わっていくことが継続につながる」(飯田さん)、「地域のポテンシャルを有効につなぐことが重要。今回は地域の大学を思ったほど巻き込めなかったのが課題」(五十嵐さん)、「大きな芸術祭の後には、まちなかで小さな活動がいくつも生まれる。トリエンナーレに関わった人がこうした活動を継続させていくことが大切」(菊池さん)と話されました。
79のキーワードについてあらためて考えることにより、人と作品、人と地域、被災地とあいちと、さまざまなものを「つなぐ」という機能をトリエンナーレが果たしていることを再認識する場となったのではないでしょうか。
(あいちトリエンナーレ2013エデュケーター 田中由紀子)