トリエンナーレ会期中5ヶ所で実施する「あいちの現代住宅シリーズ」。その最初の企画が、名古屋拠点の新進気鋭の建築家D.I.G Architects/吉村昭範(あきのり)さん、真基(まき)さん夫妻の住宅兼事務所「CmSOHO」です。建築のプロはどんな空間で暮らしているのでしょう。一行は20名で現地へ伺いました。見えてきたのは、「The Garden 覚王山」という3棟の建物群の角地に建つ、まるで石造のような温もりのある外観。『一般的に普及する建材サイディングの裏表を逆に使いました。』と吉村さん夫妻。スタートから頭の柔らかさに驚かされます。
いよいよ室内へ。まずは半地下の事務所スペースに集まって、見学ポイントのスライドレクチャーを聞きました。スキップフロアが続く煙突型の建物で、レクチャー中、参加者はさまざまな段差に腰掛け、スクリーンに注目する光景は、さながら小劇場のようでした。『敷地の条件が厳しいほど、逆境ほど燃える』というD.I.G Architectsのこれまでの建築作品も併せて解説を受けると、参加者から「おぉ」と感嘆の声があがりました。
建物の構成を理解し、いざ見学へ。この建物はチムニーと呼ばれる3つの煙突のような直方体の連なりで、下層に事務所、上層に居室と、職住機能を分けながらも立体的なワンルームのような一繋がりの空間になっています。事務所にいても子どもたちの気配が感じることができ、また子どもたちもスキップの隙間から働く両親や出入りするスタッフの姿を覗き見ることができます。この建物のキーワードである煙突の効果で、風の通り道は途切れることなく、トップライトで心地よい日差しをコントロールして、空調設備にほどんど頼らない暮らしがかなっているということです。
こちらの階段室は、室内でありながら外壁と同じ素材で仕上げられています。柔らかい光が降り注ぐ空間で、不思議と屋外のようにも感じられます。両壁は短冊状の壁面を一定の空隙を持たせながら設けているので、向こう側の様子も見え隠れして、広がりのある空間がつくり出されています。そして、壁には娘さんたちの可愛らしい絵が飾られています。その中の一枚にこの家の屋上庭園が。我が家が描かれるなんて素敵ですね。
約90分のあっという間のプログラム。働くことと住まうこと、両方を大切に考えているお二人。幸せな家族の時間にちょっとだけ加えていただいたような気になりました。
吉村さん家族、D.I.G Architectsの皆様、ご協力ありがとうございました!
(文=オープンアーキテクチャー推進チーム 道尾淳子、学生ボランティア 三浦夏美)