9月7日、愛知芸術文化センター12階アートスペースAにて、パブリック・プログラムスポットライト「ヤノベケンジ」を開催しました。今回は、大好評を博したトリエンナーレスクールに引き続き、ヤノベケンジさんを迎えてお話をお聞きしました。
ヤノベさんの作品は、愛知芸術文化センター10階と地下2階に展示されていますが、地下2階で来場者を迎える《サン・チャイルド》は、公式ポスターや公式ガイドブックの表紙にも使用され、あいちトリエンナーレ2013のシンボル的な作品の一つとなっています。防護ヘルメットを脱ぎ、傷だらけで遠くを見つめる子どもの姿は、ゴリアテに立ち向かうダビデ像をイメージしています。「誰が見てもかわいいと思えるものを目指した」というこの作品には、「うちの子に似てる」という意見も多く寄せられるとか。
10階の展示室には礼拝堂があり、実際に結婚式が挙げられます。今回の展示プランは、2011年からすでにあった《太陽の神殿》プロジェクトに沿ったものです。人工の湖の中に立つモン・サン=ミッシェルのような建物に向かい新郎新婦が誓いを立てると、水面がモーゼの奇跡のように割れて道ができ、二人が建物の階段を下りていくと、巨大な地下空間に《サン・チャイルド》が立つ《太陽の神殿》があるという壮大なプランで、実現するには100億円くらいかかるそうです。「我々は原発という間違った信仰をしてきた。太陽信仰はポディティブな生命力を礼賛し、新たな明るい未来を創造する」とヤノベさんが言うとおり、人生の新たな一歩を踏み出す新郎新婦を《ウルトラ・サン・チャイルド》の胸像が祝福します。
また今回の展示は、豪華メンバーとのコラボレーションという点でも話題になっています。花嫁の着衣室として使用される《クイーン・マンマ》は三宅一生さんとの、礼拝堂入口のステンドグラスの一部はビートたけしさんのデザインです。
展示室では、すでに4組の結婚式が行われました。初日の8月10日に挙式したカップルは、ヤノベさんのアシスタントをされていた方で、ヤノベさんの作品の搬入で訪れたデンマークで知り合い、ゴールインされたそうです。結婚により家族をつくるという行為が、新たな生命を育むという点で再生、復活につながることをヤノベさんのお話から確信しないではいられませんでした。
(あいちトリエンナーレ2013エデュケーター 田中由紀子)