6月29日(土)、名古屋市美術館2階講堂にて、トリエンナーレスクールを開催しました。今回は、あいちトリエンナーレ2013参加アーティストの藤村龍至さんを迎え、「列島改造論2.0と名古屋・ソーシャルプローブ・プロジェクト構想」と題して、トリエンナーレで展開する《あいちプロジェクト》の背景となる「列島改造論2.0」と、《鶴ヶ島プロジェクト》についてお話しいただきました。会場には建築系の学生や建築ファンの方など、200人を超える来場者が詰めかけました。
「列島改造論」といえば、農業国であった日本を工業国に転換しようと田中角栄元首相が高度経済成長期の1972年に打ち出した国土計画ですが、この「列島改造論」を背景に育った藤村さんが、現在の日本の新機軸として提言されたのが「列島改造論2.0」です。日本を一日で移動できるように新幹線や高速道路を整備し、地方と都市の経済格差の解消を目指した「列島改造論」ですが、インフラの整備や都市開発が一段落したいま、人口の減少や経済の停滞を踏まえた新たなコンセプトの必要性を感じたのが、「列島改造論2.0」を考えるきっかけだったそうです。
「列島改造論2.0」について藤村さんは、福島第一原発から45度に西南に線を引くと、埼玉、浜松、沖縄を通り、原発・郊外・移民・基地という日本が抱える問題が一直線につながると指摘。藤村さんが「問いの軸」と呼ぶその線をさらに延長すると、台湾やフィリピン、マレーシアへと至ります。これらの東南アジア諸国へ、日本がかつて農業国から工業国へ転換したシステムやインフラを輸出することが、今後の日本の成長戦略につながると話されました。
また国内戦略としては、少子化や高齢化に伴い、これまで整備してきた地方のインフラや公共施設をどう縮小していくかが問題と指摘しながら、こうした行政の問題を建築の視点から解決を試みた事例として、埼玉県鶴ヶ島市で行った《鶴ヶ島プロジェクト》を紹介されました。これは、公共施設の老朽化と高齢化が先行していた同市に、小学校と公民館の機能を複合化した新たな公共の場のイメージを学生から提案するというプロジェクトで、地域住民を巻き込んだパブリックミーティングを重ねることにより、公共建築から地域社会の将来像を考えていったそうです。
あいちトリエンナーレ2013では、現在の愛知県庁舎と名古屋市庁舎を博物館に転用し、道州制の導入を見据えた東海州庁舎と、大村知事が提唱する中京都構想に基づく中京都庁舎の建設を想定した《あいちプロジェクト》を展開し、パブリックミーティングも開催する予定です。ぜひ、多くの方に参加いただきたいと思います。
(あいちトリエンナーレ2013エデュケーター 田中由紀子)