5月11日(土)、愛知芸術文化センター12階アートスペースAにて、トリエンナーレスクールを開催しました。今回は、あいちトリエンナーレ2013参加アーティストのヤノベケンジさんを迎え、「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」と題して、これまでの制作とトリエンナーレにかける想いをお話しいただきました。会場には300人近い来場者が詰めかけ、立ち見も出るほどの盛況ぶりでした。
ヤノベさんは、1990年に《タンキング・マシーン》を発表し、第1回キリンコンテンポラリーアートアワード最優秀作品賞を受賞して、アート界にデビュー。以降、「未来世界を生き抜くためのサバイバル」をテーマに実機能をもつ彫刻作品を数多く手がけ、1997年からは自作の放射線感知服を着て、原発事故後のチェルノブイリや大阪万博跡地の廃墟をさまよい歩く「アトムスーツ・プロジェクト」を展開しました。そんなヤノベさんの制作の原点は、幼少期に訪れた大阪万博会場の解体現場が、未来の廃墟に見えたことにあるそうです。
21世紀になり、また父親となったのを機に、新時代を生きる子どもたちへ向けて「リバイバル」へとテーマを移行させ、バーコード頭にちょび髭、アトムスーツを着たキャラクター、トらやんを作品に登場させます。このトらやんは、ヤノベさんのお父様が腹話術の練習をするために持ち込んだ腹話術人形から生まれたキャラクターだそうです。2003年に国立国際美術館で開催した個展の搬入中に、作品である子ども用のアトムスーツがなくなって大騒ぎとなり、ヘトヘトになって帰宅すると、腹話術人形にアトムスーツが着せられていた(お父様の仕業...!?)のを発見して驚いたのがトらやん誕生の瞬間だったというエピソードに、会場は大爆笑でした。
2011年の東日本大震災以降は、ゴリアテに立ち向かうダビデ像をイメージし、防護服のヘルメットを脱いだ子どもの立像《サン・チャイルド》を制作します。《サン・チャイルド》の頬に絆創膏が貼られた姿には、震災で傷ついた人々が象徴されており、復興と再生というメッセージが全面に打ち出されています。
終盤には、トリエンナーレで発表する新作の、神殿をイメージしたという展示プランや、そこで実際に行われる予定の結婚式について語られました。豪華メンバーとのコラボレーションも予定されている新作に、来場者の方々のトリエンナーレへの期待はますます高まったに違いありません。
このスクールの様子はユーストリームのアーカイブでご覧いただけます。
次回のトリエンナーレスクールは6月29日(土)の開催です。是非ご参加ください。詳しい情報は以下のリンクをご覧ください。
(あいちトリエンナーレ2013エデュケーター 田中由紀子)