トリエンナーレスクール vol.6 「インディペンデント・フィルムの見方と楽しみ方」
2010/04/07 14:01|トリエンナーレスクール
(遅くなりましたが、トリエンナーレスクールのご報告です)
トリエンナーレスクール第6回として、「インディペンデント・フィルムの見方と楽しみ方」が開催されました。会場が各回によって変わるこの催しですが、今回はスクールとしては初めて、愛知芸術文化センター12階のアートスペースEFで行われました。
近年、現代美術における特徴的な動向の一つとして、フィルムやビデオなど映像メディアを使用した作品が多く目に付くようになった、という指摘があります。こうした動きは1990年代から見られるもので、名古屋市美術館と名古屋市科学館を会場に、アートとテクノロジーの関係をテーマに開催されていた「名古屋国際ビエンナーレ・アーテック」でも、97年には16mm映写機を使用したスタン・ダグラスの『デル・ザントマン』が話題となる、といった形で目に見えるものになっていったことが思い出されます。
インディペンデント・フィルムとは独立映画とも訳されていて、通常、映画館で上映されている興行ベースで製作される劇映画に対し、芸術性や作品性を優先して、作家が主体となり、映画会社などから独立した立場で作られる映画のことです。具体的には、自主製作映画や、実験映画、ドキュメンタリーなどのジャンルの作品にそうしたものが多く、また実験映画の流れを汲んだビデオアートも含まれるといっていいでしょう。そして、これらのジャンルで培われた実験や、実績を重ねた作家たちが、現代アートの分野にも進出している、といった現象も表れています(例えば、「あいちアートの森」豊田プロジェクトの喜楽亭会場に出品していた、映像作家の石田尚志もそうした一人です)。
当日は名古屋・今池にある独立系の映画館で、全国的に見ても、ミニシアターと呼ばれるアート系作品の上映館の先駆けとなった、名古屋シネマテークの支配人・平野勇治さんをお迎えし、愛知県文化情報センターが所蔵する映像作品を紹介しつつ、インディペンデント・フィルムの歴史的な流れや、時代ごとの作品の特徴や見どころなどを解説する形で進行しました。
インディペンデント・フィルムというと、戦後の独立プロダクションや、60年代のアンダーグラウンド(アングラ)映画を思い浮かべる、映画好きの方もいらっしゃるでしょう。しかし、映画初期のサイレント時代から、作品の主体性を守るため、商業主義を嫌って独自の配給網を作ろうという動きがあった、という話題は興味深かったのではないでしょうか。そして、商業性と作品性の相反する関係は、シネマコンプレックス(シネコン)とミニシアターという構図にも反映され今も続いている、という現場からのリアルな声は、単純な娯楽として映画を観に行く観客の立場ではなかなか気付きづらい、貴重な体験となったのではないでしょうか。
トリエンナーレでは、展示で映像を使った作品も出品されますが、その他にも小ホールの上映プログラムとして、こうしたインディペンデント系の作品を紹介する予定です。そして、映画には多様な作品があることに触れて、それをきっかけに映画館にも足を運んでくださる方が増えることを願っています。
(T.E)
トリエンナーレスクール第6回として、「インディペンデント・フィルムの見方と楽しみ方」が開催されました。会場が各回によって変わるこの催しですが、今回はスクールとしては初めて、愛知芸術文化センター12階のアートスペースEFで行われました。
近年、現代美術における特徴的な動向の一つとして、フィルムやビデオなど映像メディアを使用した作品が多く目に付くようになった、という指摘があります。こうした動きは1990年代から見られるもので、名古屋市美術館と名古屋市科学館を会場に、アートとテクノロジーの関係をテーマに開催されていた「名古屋国際ビエンナーレ・アーテック」でも、97年には16mm映写機を使用したスタン・ダグラスの『デル・ザントマン』が話題となる、といった形で目に見えるものになっていったことが思い出されます。
インディペンデント・フィルムとは独立映画とも訳されていて、通常、映画館で上映されている興行ベースで製作される劇映画に対し、芸術性や作品性を優先して、作家が主体となり、映画会社などから独立した立場で作られる映画のことです。具体的には、自主製作映画や、実験映画、ドキュメンタリーなどのジャンルの作品にそうしたものが多く、また実験映画の流れを汲んだビデオアートも含まれるといっていいでしょう。そして、これらのジャンルで培われた実験や、実績を重ねた作家たちが、現代アートの分野にも進出している、といった現象も表れています(例えば、「あいちアートの森」豊田プロジェクトの喜楽亭会場に出品していた、映像作家の石田尚志もそうした一人です)。
当日は名古屋・今池にある独立系の映画館で、全国的に見ても、ミニシアターと呼ばれるアート系作品の上映館の先駆けとなった、名古屋シネマテークの支配人・平野勇治さんをお迎えし、愛知県文化情報センターが所蔵する映像作品を紹介しつつ、インディペンデント・フィルムの歴史的な流れや、時代ごとの作品の特徴や見どころなどを解説する形で進行しました。
インディペンデント・フィルムというと、戦後の独立プロダクションや、60年代のアンダーグラウンド(アングラ)映画を思い浮かべる、映画好きの方もいらっしゃるでしょう。しかし、映画初期のサイレント時代から、作品の主体性を守るため、商業主義を嫌って独自の配給網を作ろうという動きがあった、という話題は興味深かったのではないでしょうか。そして、商業性と作品性の相反する関係は、シネマコンプレックス(シネコン)とミニシアターという構図にも反映され今も続いている、という現場からのリアルな声は、単純な娯楽として映画を観に行く観客の立場ではなかなか気付きづらい、貴重な体験となったのではないでしょうか。
トリエンナーレでは、展示で映像を使った作品も出品されますが、その他にも小ホールの上映プログラムとして、こうしたインディペンデント系の作品を紹介する予定です。そして、映画には多様な作品があることに触れて、それをきっかけに映画館にも足を運んでくださる方が増えることを願っています。
(T.E)