TriMemoでは、港芸術監督が撮影した写真を定期的に紹介していきます。写真家でもある監督の視線を通して、開催準備中のあいちトリエンナーレ2016の姿が次第に浮かび上がっていく仕掛けです。

TriMemoは、「Aichi Triennale Memorandum」を略して名付けました。

2016年01月05日

A HAPPY NEW YEAR ! YENI YILINIZ KUTLU OLSUN ! FELIZ ANO NOVO !
あけましておめでとうございます!

あいちトリエンナーレ2016の開催年となりました。8月11日のオープンに向けて、いよいよ準備も本格化します。この地球のあらゆる方角から、さまざまな色や形や声や踊りを積んだキャラヴァンが、あいちを目指して出発します。

すべての人に開かれた、創造のキャラヴァンサライ。みんなで作る芸術の旅のため、スタッフ一同、全力を尽くします。驚きと感動の虹をかける祝祭となるように、より多くの参加と応援を心からお願いいたします。

2016年が良い年になりますように!

港千尋

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001 Marburg / my rainbow collection

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002 Istanbul / my rainbow collection

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003 Berlin / my rainbow colleciton

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004 Aven Armand Cave / my rainbow collection

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005 Cochin / my rainbow collection

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006 Tainan / my rainbow collection

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007 Los Angels / my rainbow collection

2015年11月17日

Tri Memo Vol.08「オーカーとつぶて」

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開幕まで300日を切り、トリエンナーレの準備はいよいよ本格化してきました。去る9月30日には東京でトークイベントが行われ、この秋から参加予定作家たちが下見や準備のために愛知を訪れています。海外キュレーターのダニエラ・カストロさんとゼイネップ・オズさんも再来日し、会場の具体的な検討や日本の美術関係者とのディスカッションなど、短い滞在のなかで精力的に動いています。またブラジルからリビディウンガ・カルドーゾさん、北米からニコラス・ガラニンさん、北海道から岡部昌生さんが相次いで来名し、遠く離れたアーティストどうしが愛知県で初めて出会い、互いに交流を深めています。遥かな地平をめざすキャラバンの形がいまようやく見えてきました。

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東京で開かれたディスカッションでtrans-のさまざまな概念を説明するダニエラさん。

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パルルで開かれた交流会で、アマゾンの島について話すリビディウンガさん。

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トリエンナーレのパートナーシップ事業のひとつとして開かれた岡部昌生『被爆樹に触れて』展。会場となった、ちくさ正文館ではトークショーも開かれ、とても多くの方々に参加をいただきました。

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リビディウンガさん、岡部さんといっしょに、常滑を訪れました。秋の色が美しいもの静かな街並み。そこかしこに「創造する手」の痕跡が点在する、素晴らしい土地に二人とも感動していました。

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岡部さんにとって、常滑はなんといっても盟友鯉江良二さんの住む土地です。1980年代以来、札幌での二人展などを通した長い交流がありました。

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岡部さんとはほんとうに久しぶりの再会になった鯉江さん。この日のために、岡部さんは札幌からおみやげを持ってきていました。1995年に札幌で展示された400個の「飛礫」のうちのひとつです。20年前に自ら制作した飛礫を、じっとみつめる鯉江さん。まるで、時の塊のようです。

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二人展『ヒロシマその後』のために制作された「飛礫」は、広島の土にさまざまな日用品が混ぜられ焼成されたもの。握るとかすかに熱を感じました。

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ニコラス・ガラニンさんはアラスカの先住民族、トリンギット族の出身。愛知に来る前に北海道を経由して、日本の先住民であるアイヌ文化に出会ってきました。自然との関係など多くの共通点を見出して、感動したそうです。

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トリンギットの伝統的なデザインをベースにした彫刻やジュエリーなども制作するニコラスは、縄文土器をはじめとする日本の陶芸にも強い興味をもち、陶磁美術館を視察に訪れました。そこで初めて見せられた、この土地の土。ガラス瓶のなかに大切に保存されているのは、まぎれもないイエローオーカーの土です。土に敏感なニコラスは、ひと目でトリエンナーレ2016のカラーだと分かったようです。

2015年09月17日

TriMemo vol.07「ボスポラス海峡の風」

この9月5日、イスタンブール・ビエンナーレが開幕しました。9月初旬とはとても思えない真夏の気候にもかかわらず、プレビューには多くの人が駆けつけましたが、今回はあいちトリエンナーレのキュレーターのひとり、イスタンブール在住のゼイネップ・オズさんに案内していただけたので、その一端を紹介します。

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001 猛暑のなか、町中のわかりにくい会場にたどり着けたのは、本当にこの看板を持った人たちのおかげです。

第14回となる今回のテーマは「ソルトウォーター」。直訳すれば、「塩水」つまり海水ですが、そこにはさまざまな意味が込められているようです。芸術監督はキャロライン・クリストフ=バカルギエフ、前回のドクメンタのディレクションで注目を集めましたが、今回はテーマのみならず、会場構成でも新しさを打ち出しています。

これまではイスタンブール近代美術館を中心にコンパクトにまとめられていたビエンナーレでしたが、今回は中心部のギャラリーだけでなく対岸のアジア側、船で40分以上かかるプリンス諸島、果てはボスポラス海峡北の黒海側と、会場を非常に広範囲に点在させています。船を使わなければ見に行けない場所を多く作ることで、塩水と潮風を直接的に感じることを、テーマとして取り込んでいます。
 
町中会場も印象的で、元小中学校、銀行、ガレージ、カフェ、民家、ホテルから、なんとトロツキーが住んでいた元屋敷といった、イスタンブール市民にさえあまり知られていない場所が選ばれています。特にプリンス諸島と呼ばれる島嶼会場の選定には、地元のノーベル文学賞受賞作家のオルファン・パムク氏の協力もあったと伝えられますが、いずれにしてもこれは国際的な芸術祭でなければできないことだろうと思います。外国人はもちろんですが、トルコ人にとってもほとんど初めての首都再発見の機会を作ることで、芸術祭の可能性を示したと言えるかもしれません。

すでに広く報じられているように、現在ヨーロッパにはイラクやシリアから紛争を逃れるため、膨大な数の難民がトルコ経由で入っています。政治的緊急を映す水面もまたソルトウォーターなのだということが、じわりと伝わるテーマです。

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002 メイン会場の近代美術館。

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003 オープニングトークはイスタンブール在住の重要アーティスト、フュスン・オヌール(中央)聞き手にハンス・ウルリッヒ・オブリスト、芸術監督自ら司会を務めていました。

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004 薄緑色のテーマカラーで統一されたグッズ売り場。「塩」もしっかり売られてます。

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005 セレモニー会場を照らすのは、今年のベネチア・ビエンナーレにも出ていた、サルキスのレインボーネオン。

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006 市内のギャラリーで開かれたオープニングには、突然ブラスバンドが応援に。

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007 ボスポラス海峡にあるプリンス諸島には船で40分ほどかかります。

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008 自動車のない島では、未だに馬車が走り、時間が止まったかのよう。

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009 瀟洒な屋敷が並ぶなか、レフ・トロツキーの家は廃墟でした。

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010 トロツキーの家を抜けると出現するアドリアン・ビジャール・ロハスの作品。

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011 やはりトロツキーのトルコでの足跡を扱った映像インスタレーションを見ていたら、作者のウィリアム・ケントリッジがスクリーンの裏から現れてびっくり。この後のオルファン・パムクとの対談「亡命と釣り」は面白かった。

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012 庶民の味よ、とゼイネップさんに教えられた、ムール貝風のスナック。日本人にとっても、どこか懐かしい風味です。

2015年06月24日

TriMemo vol.06

イタリアのヴェネツィアで2015年5月から開催されている、ヴェネツィアビエンナーレを訪れた時の写真です。

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ヴェネツィアビエンナーレは最も長く続いている国際芸術祭で、今年で56回を迎えます。いつもより1ヶ月も前倒しのスタートでしたが、オープニングはたいへんな賑わい。国別パビリオンの中には行列しなければ入れないところもけっこうあり、短い時間の中で見て回るのは至難の業です。それでもジャルディーニとアルセナーレの2会場は非常に充実した展示で、今回のディレクターの真摯な取り組みと参加者全体の熱意が伝わってきます。

ガイドブックだけで400ページ近い厚さですから、すべてを見尽くすわけにはいきません。このビエンナーレは、ときに水上の都の路地に迷いながら、ゆっくり見るほうが本来の楽しみ方だろうと思います。運河を大小の船が行き交うヴェネツィアは、旅と移動の歴史がそこかしこに見える都市です。今回は、トリエンナーレのテーマでもある、さまざまな旅や移動、乗り物などのイメージに惹きつけられました。

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001 塩田千春『掌の鍵』
すでに広く報じられているように、代表作家・塩田千春が気の遠くなるような数の鍵で日本館を埋め尽くした『掌の鍵』。中央に置かれた船は、忘却の鍵穴を探しにゆくための乗り物かもしれません。

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002 ココ・フスコ『告白』
アルセナーレのいちばん奥の、小さな建物で上映されていた。N.Y.在住のココと東京で会ったのは、もしかすると20世紀のことだったかもしれません。今回は彼女の出自であるキューバへ、いくつもの言葉を探しに戻ってゆく、回帰の映像。

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永遠の旅人クリス・マルケルとトルコの作家クツルグ・アタマンの予期せぬ邂逅は、デジタル時代に人間の像を刻むことの謎を問うているように思えました。

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004 クツルグ・アタマン『サキップ・サバンチのポートレート』
1万枚近くの小型液晶で編まれたカーペットには、夥しい数の肖像写真が変化しながら表示されています。

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005 クリス・マルケル『乗客』
クリス・マルケルは晩年、パリの地下鉄に乗り込み、小型カメラを装着したメガネで見知らぬ乗客たちの素顔を撮影しました。シリーズ『乗客』の全作品が高画質のプリントで展示されるのは、おそらく初めてのことです。

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006 エルネスト・バレステロス『インドア・フライト』
作家自身が超軽量の飛行機を会場内で制作し、自ら飛行させています。軽さと壊れやすさの微妙なバランス。

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007 リダ・アブドゥル『イン・トランジット』
今回見ることのできた作品のなかで、もっとも強い印象を残したのは、短い映像作品でした。なぜか対岸の島にあるキューバ館で展示されていた、アフガニスタンの作家の作品です。戦禍で荒れ果てたカブール郊外の子どもたちが、スクラップと化した戦闘機(おそらくソ連によるアフガニスタン侵攻時に墜落したもの)の穴に綿を詰め、無数の糸をつけて空へ揚げようと遊んでいる映像です。その痛切なイメージは、島を離れても脳裏に焼きついています。

2015年05月01日

TriMemo vol.05

 国際展の海外キュレーターのお二人、ダニエラ・カストロさんとゼイネップ・オズさんが来日しました。ダニエラさんはブラジル生まれ、サンパウロを拠点にすでに多くの展覧会を手がけています。一方のゼイネップさんはトルコ生まれ、イスタンブールを中心に展覧会を作りながら、現代美術の制作を支援するグループも運営しています。短い滞在にもかかわらず、名古屋、岡崎、豊橋の会場予定地を視察し、トリエンナーレの開催へ向けて、大きな手応えを感じている様子でした。

 移動中お話を聞きながら、30代という若さにもかかわらず、現在の世界に対する明確な視点と態度をもっていることに強い印象を受けました。ダニエラさんはブラジル国内を5年かけて巡回した『領土再編』という展覧会を手がけています。ゼイネップさんはベイルートへ頻繁に出かけ、アートNPOとの共同企画を実現しています。それぞれ南米と中東という激動する現場を、自ら移動しながら見つめ考えるなかで培われた世界観があります。

 笑顔が優しく、明るく軽やかなイメージですが、その眼差しは状況を射抜くような厳しさも併せ持っているようです。日本を訪れるのは二人とも初めてだとのことでしたが、京都、東京、横浜へも足を伸ばし、めまぐるしいスケジュールのなかにも、日本の旅を満喫されたようです。これからどんなアイデアが届くか、楽しみです。地球の双方向から出発するキャラバンが、いま動き出しました。

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2015年03月04日

TriMemo vol.04


 インド・ケーララ州で2014年12月から開催されているコチ・ビエンナーレを訪れた時の写真です。






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01 ヴァスコ・ダ・ガマ広場の野外展示 
    Gulammohammed Sheikhの作品 <Balancing Act>




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02 会場のいたるところに、無料のウォーターサーバーが設置してある。
  
2月でも気温30度の日中には、とてもありがたい!





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03 会場近くにはこんな看板も。





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04 チケット売り場のサインは壁に直接ペイントです。






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05 メイン会場となったAspinwall Houseは植民地時代の旧兵舎。
   港湾に面してビエンナーレカフェがオープン。
  
海風に吹かれながら軽食も取れるので、期間中は人気スポットのようです。






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06 キッズビエンナーレ、学生ビエンナーレと関連企画も多く、
   メイン会場では木陰でドローイング教室が開かれている。





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07 巨大な鐘から水が噴き出す 
  Gigi Scariaの作品 
<Chronicles of the Shores Foretold>
  コーチンにはキリスト教の教会が多い。





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08 空地全体を彫刻空間に変えた作品 <How goes the Enemy> 
   とアーティストのValsan Koorma Kolleri





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09 <How goes the Enemy> Valsan Koorma Kolleri 大地を頭のうえに載せている。




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10 訪れた人が、自分の出身地をピンで記録する世界地図。





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11 ヨーロッパが意外に多いことがわかります。




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12 インドの中では、やはり南部が多いようです。

2015年02月04日

TriMemo vol.3

奥三河への道は深い雪に覆われていましたが、念願かない豊根村の花祭に参加することができました。年月を感じさせる木造の建物に一歩足を踏み入れると、そこには太鼓と笛と舞がつくりだす、日常とはまた別の時間が流れています。
 古の時から続く舞のリズムは、小さい頃から身体で覚えるよう、大人から子どもへ、ベテランから新米へと、連綿と受け継がれてきたことがわかります。深夜を過ぎれば、いよいよ場は揺れ動き、陶然たる時の訪れが予感されます。
 中央の湯立からたちのぼる天井を見上げれば、湯気に色とりどりの紙飾りが揺れていて、まるで虹のように見えました。

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2015年01月05日

TriMemo vol.2

イスタンブールから西へ車で2時間半。古都エディルネに残るキャラヴァンサライを訪ねました。
 高く頑丈な壁と、美しい回廊に囲まれた中庭は、まるで宮殿のようです。
 「隊商宿」よりは「隊商殿」と呼んだほうがぴったりの壮麗な建築は、現在もホテルとしてあるいは商店街として、町の活気なかに溶け込んでいます。
 数世紀にわたり遠方からの旅人たちを迎えてきたサライには、ゆったりした歓待の時間が流れているようでした。

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エディルネにあるキャラヴァンサライ。高い壁には美しい装飾の窓が残り、今も行き交う人々を見守っている。

2014年11月12日

TriMemo vol.1

 あいちトリエンナーレ2016のテーマは、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」に決まりました。
 キャラヴァンが停泊する家、それがキャラヴァンサライです。2年後の夏から秋にかけ、世界中から作品と人とが旅をして、美術、音楽、舞台、ダンス、オペラが繰り広げられる「家」が生まれます。
 これからその芸術祭、トリエンナーレへ向けた旅の間、写真とテキストでメモをつけてゆこうと思います。
 略してトリメモ。三日坊主にならないようにがんばります!
 よろしくお願いします。

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南モンゴル オーカーが露出する山からゴビ砂漠を望む。この大地からは恐竜の卵のような化石も見つかる