【EXT】藤井光
レクチャーパフォーマンス/鑑賞ツアー『無情』
- Photo:Hikaru Fujii
歴史的事象を現代に再演(リエナクトメント)する手法で、社会の不可視の領域を構造的に批評するアーティスト、藤井光。今回は、20世紀の「情の時代」、すなわち個々人の内面さえもが全体主義に動員されてしまった時代を振り返ることで、今日の「情の時代」を考察する。
かつて日本統治下の台湾で製作された国策プロパガンダ映画「国民道場」では、10分29秒の映像の中に、現地の台湾人が「皇民」、すなわち「日本人」になるための一連の訓練や宗教儀礼の様子が記録されている。それはまさに個人の感情を一切排除した「無私」「無情」の映像であり、当時の軍国主義・植民地政策の価値観をそのまま体現するものであった。
この映像を、現代において批評的に「再演」するにはどうしたらいいか。この問いに対し藤井は、愛知県内で学び働く若い外国人らとともに「もともと日本人ではない状態から日本人である状態に変える(変わる)」ための舞台をしつらえ、そこで展開される集団および個人の身振りを撮影、5チャンネルの映像インスタレーションとして発表する。
また今回のエクステンション企画では、愛知県内に暮らす外国人らを美術館に招き入れ、藤井自身によるレクチャーパフォーマンスを含めた展覧会鑑賞ツアーを実施。展覧会は異なる集団と個人が経験を交換する場として再編成され、美術館の内と外の現実が創造的に繋ぎ直されることになるだろう。
エクステンション企画:国際現代美術展参加作家によるレクチャー形式のパフォーマンスや、作品の集団鑑賞と議論の場を組織する企画。
藤井光
- 1976年東京都生まれ
- 東京都拠点
芸術は社会と歴史と密接に関わりを持って生成されるという考え方のもと、様々な国や地域固有の文化や歴史を、綿密なリサーチやフィールドワークを通じて検証し、同時代の社会課題に応答する作品を、主に映像インスタレーションとして制作している。その方法論は、各分野の専門家との領域横断的かつ芸術的協働をもたらす交点としてのワークショップを企画し、そこで参加者とともに歴史的事象を再演する「リエナクトメント」の手法を用いるほか、参加者による活発な意見交換を促す議論の場を作り出すなど、過去と現代を創造的につなぎ、歴史や社会の不可視な領域を構造的に批評する試みを行っている。
主な作品発表・受賞歴
2018 | 「How you know little about me」韓国国立現代美術館ソウル館、ソウル(韓国) |
2018 | オナシス・ファスト・フォワード・フェスティバル5、旧化学実験室、国立アテネ大学法学図書館、アテネ(ギリシャ) |
2018 | 「開館40周年記念展 トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」国立国際美術館、大阪 |
2017 | NISSAN ART AWARD 2017、BankART1929、神奈川、グランプリ受賞 |
2016 | 「MOTアニュアル 2016 キセイノセイキ」東京都現代美術館、東京 |
公演パンフレット
公演情報
公演日時 | 9月22日(日)17:00 | |||
上演時間 | 90分(予定) | |||
上演言語 | 日本語 | |||
チケット料金 | 1,300円 ※当日券の販売はございません | |||
注意事項 | 未就学児はご入場いただけません |
地図
名古屋市美術館講堂
所在地
愛知県名古屋市中区栄2丁目17−25
芸術と科学の杜・白川公園内
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・地下鉄鶴舞線「大須観音」駅下車 徒歩7分
・地下鉄名城線「矢場町」駅下車 徒歩10分