無情

  • あいちトリエンナーレ2019の展示風景
    《無情》2019
    Photo: Ito Tetsuo
N03

空間全体が黒く覆われた展示室には、合計5つの映像が展示され、そのうちの1面はモノクロの古い映像、それ以外の4面はカラー/高解像度の映像となっています。1940年代前半に制作されたこのモノクロフィルムは、国立台湾歴史博物館に収蔵されている歴史資料です。収められている内容は、台湾の人々を「日本人化」する目的で台湾内に複数設置された「国民道場」の様子を報じたものです。もう一方のカラー映像は、愛知県内で学び働く若い外国人らが、フィルムの中で行われている訓練や、宗教儀礼の様子を再演した映像となっています。映像の冒頭に挿入される文章は、日本で育った台湾人文学者、周金波による「国民道場」を舞台にした1944年発表の小説『助教』(日本統治下の 台湾総督府情報課委嘱作品)より引用されています。
作家は近年、歴史的な事象を現代において再演する手法(リエナクトメント)を用いて作品を制作・発表しています。再演することによって、単にこれらが過去の事実であったということ以上の感情を、現代の観客に対して呼び覚まします。

藤井光

  • 1976年東京都生まれ
  • 東京都拠点


芸術は社会と歴史と密接に関わりを持って生成されるという考え方のもと、様々な国や地域固有の文化や歴史を、綿密なリサーチやフィールドワークを通じて検証し、同時代の社会課題に応答する作品を、主に映像インスタレーションとして制作している。その方法論は、各分野の専門家との領域横断的かつ芸術的協働をもたらす交点としてのワークショップを企画し、そこで参加者とともに歴史的事象を再演する「リエナクトメント」の手法を用いるほか、参加者による活発な意見交換を促す議論の場を作り出すなど、過去と現代を創造的につなぎ、歴史や社会の不可視な領域を構造的に批評する試みを行っている。

主な作品発表・受賞歴

2018 「How you know little about me」韓国国立現代美術館ソウル館、ソウル(韓国)
2018 オナシス・ファスト・フォワード・フェスティバル5、旧化学実験室、国立アテネ大学法学図書館、アテネ(ギリシャ)
2018 「開館40周年記念展 トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」国立国際美術館、大阪
2017 NISSAN ART AWARD 2017、BankART1929、神奈川、グランプリ受賞
2016 「MOTアニュアル 2016 キセイノセイキ」東京都現代美術館、東京

地図

名古屋市美術館

所在地

〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄2丁目17−25
芸術と科学の杜・白川公園内

開館時間

9:30-17:00(金曜は20:00まで)
入館は閉館の30分前まで

休館日

月曜日(祝休日は除く)、9/17(火)

バリアフリー

車椅子の無料貸し出しをしています。ご利用の方はインフォメーションまでお申し付けください。(各会場のバリアフリー対応状況は【こちら】

アクセス

・地下鉄東山線・鶴舞線「伏見」駅下車 徒歩8分
・地下鉄鶴舞線「大須観音」駅下車 徒歩7分
・地下鉄名城線「矢場町」駅下車 徒歩10分

問い合わせ

052-971-6111