2018年3月22日 トリエンナーレスクール

トリエンナーレスクール 第1回

アーティスティック/ディスカバー 地域の魅力を見つめる方法

2018年2月24日(土)トリエンナーレスクール・レポート

あいちトリエンナーレ2019に向けた、トリエンナーレスクールの第1回目が、2月24日(土)にアートラボあいちで開催されました。
あいちトリエンナーレ2010から、現代美術を紹介するスクールとして始まり、トリエンナーレファン以外にも浸透しつつある今スクールは、2018年から内容編成を少し変え、「聞く・考える・話す・共有する」ことを、より積極的に参加者を巻き込んでいきます。
今回のスクールでは、まず進行役の会田大也さんが、スクールの意図と第1回目のテーマ、主眼について紹介し、それに沿ってゲストの空閑理さんが、トークを展開しました。それを第1部とし、続く第2部ではワールドカフェ方式で参加者全員がトークについて意見を交換し合うディスカッションが行われました。

<概要>

あいちトリエンナーレ2019 トリエンナーレスクール vol.01
2018年2月24日(土)14:00-16:00
『アーティスティック/ディスカバー 地域の魅力を見つける方法』

ゲスト:空閑理(クガ オサム)
編集者。2010年より「D&DEPARTMENT PROJECT」に参加。47都道府県ごとの個性を「ロングライフデザイン」の視点で編集するトラベルガイド「d design travel」の編集を手がけ、2013年から2016年まで編集長を務めた。

進行:会田大也(アイダ ダイヤ)
ミュージアムエデュケーター。2003年開館当初より11年間、山口情報芸術センター(YCAM)で教育普及を担当。
さまざまなワークショップを企画、「コロガル公園」シリーズでは2014年度グッドデザイン賞を受賞。
2014年より東京大学大学院ソーシャルICTグローバル・クリエイティブ・リーダー[GCL]育成プログラム特任助教。

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<スクールの様子>

(以下は、トークやディスカッションの様子をまとめたものです。詳細は、<第1部:トーク内容>をご覧ください。)

会田さんからは、2018年におこなうトリエンナーレスクールに関して、「アートに興味、関心がない人をどのように巻き込むか」、「アーティスティックであること、クリエイティブであることが、初めての局面に出会った時、問題が起こった時に、人を前に進める原動力になる」という点について言及。
特に、アートだけを取り上げた時にはアンテナに引っかからなかったような人たちへのアプローチの必要性と、一方で積極的にアートに関わらない人たちがいることの確認と、その人たちの意思も尊重したいという話は印象的でした。
また、どんな人にとっても「アーティスティック」であり「クリエイティブ」であることが、これからますます変化をしていく世界を生きていく時に力になるという言葉にはぐっとくるものがありました。

「中と外の視線」についても図を交えて紹介がされました。今回のスクールのテーマから考えると、地元と外ということに対応する、中と外の視線。
これはアートの中と外、あるいは日本の中と外ということにも当てはめて考えることができます。
地元ということに限って考えても、地元の人が考える地元の問題と、外の人が考えるその地元の問題、地元の人からみた外(県外など)の認識などは、それぞれ違ってきます。
私たちが何かについて考えたり、行動を起こしたりするとき、どの視点に立っているのか、そういうことを頭に置いてトークに望むことになりました。

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(スクール像について説明する会田氏)

トークゲストの空閑理さんは、デザイン会社「D&DEPARTMENT」に勤め、2009年から「d design travel」というトラベルガイドの編集を担当されました。
「D&DEPARTMENT」はロングライフデザインをコンセプトに、デザイン会社ながら実店舗を持ち、日用品や家具、生鮮食品なども販売しています。
コンセプトを一番よくあらわしているのが商品ポップで、その商品が誕生して何年目かが記載されています。
ずらずらと言葉を並べるよりも、その商品がどれくらい価値があり、愛されているのかが一目でわかるということで、すべての商品ポップに年数が記載され、毎年更新されています。
日本各地のさまざまなロングライフデザインの商品を取り扱っていますが、「47都道府県すべてに出店して、そこを拠点にその土地の特色あるものや長く続いているものを紹介していきたい」というのが願いながら、出店はなかなか難しく、そんななかで「d design travel」が創刊されることになりました。
47都道府県すべてのトラベルガイドをつくるということで、1年に3号ずつ発刊され、現在24号まで誕生しました。あと半分、まだまだ継続して刊行されています。
2016年に退職した空閑さんですが、それまでも、これからも変わらない「d design travel」の作成にまつわるさまざまなこだわりがあるということで、大量のスライドとともに紹介されました。

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(編集の考え方について説明する空閑氏)

トラベルガイドをつくるためには、県を決める、取材候補を選ぶ、取材をする、編集、発行、という大まかな流れがありますが、発行する県の順番は特に決まりがないそうで、創刊号が北海道で、鹿児島、大阪、長野と、バラバラ。取材する県を決めたら、現地に入り、まずは地元の人の話を聞くところからはじまります。
他の雑誌やガイドブックを参照にすることはないそうで、ワークショップを実施し、地元の人が考える、その土地らしいものを紹介してもらいます。
10人ずつ6グループ程度にわかれて候補地を絞りますが、なんでもいいのではなくて、コンセプトに沿った条件にすべて当てはまるものということで、これが難しいそう。その条件とは次の5つ。

1 その土地らしいこと
2 その土地の人がやっていること
3 その土地らしいメッセージを持っていること
4 利用価値が適切なこと
5 デザインの工夫があること

これらの条件にあうものを6つのカテゴリーから選び出します。

1 sights(観光)
2 restaurants(飲食)
3 shops(お土産品など)
4 cafes(カフェ、居酒屋、バー)
5 hotels(宿泊施設)
6 people(その土地のキーマン)

カテゴリーごとにグループに分かれ、2つまで候補をしぼりワークショップの最後に発表します。
でも、やっぱり紹介したい、と思うものはアンケートに書いてもらうそうで、愛知号のためのワークショップでは結局200箇所くらいの候補地が出てきたのこと。
時間が許す限り取材に行ったということですが、取材のために2ヶ月は現地に滞在し、滞在先となる宿泊施設も取材候補から選んでいます。

ワークショップを経て選ばれた候補地へ取材に行く際にも、ずっと貫いているこだわりがあります。

1 必ず自分たちで利用する
2 取材対象に何か問題があっても、素晴らしければ問題を指摘しながら進める
3 原稿チェックは事実確認のみ
4 長く続くものだけを取り上げる
5 特殊レンズなどを使って写真撮影をしない、ありのままを撮影する
6 取り上げた場所とは継続的に交流を持つこと

一貫していたのが「感動しないものは取り上げない」、「とことんまで感動したら真摯に向き合って取材をする」ということでした。
取材のために特別扱いをしてもらったりしない、そこで生活している人たちと同じように体験し、でもそこに感動ポイントがあったらすかさず拾っていく、という姿勢には時間がかかることだけど、丁寧に対象と向かいあう姿勢が見て取れました。

「d design travel」愛知号の表紙がなぜ「オリエンタル坊や」になったのか、そして表紙に決まるまでの紆余曲折などの話をはさみつつ、第2部へと移りました。

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第2部では、4〜5名ごとにテーブルにつき、トークについて自由に意見交換をするディスカッションが実施されました。
ワールドカフェの手法を用い、10分間隔でメンバーをシャッフルしていきました。結論を求めたり、結果を発表するものではないので、時間いっぱいまで議論を交わしました。

時々、会田さんや空閑さんを交えつつ、「オリエンタル坊や」が表紙になったことの是非や、中と外の視線が複雑にからみあうこと、愛知らしさ、愛知県民の特色、愛知の文化をどうアピールすべきか、トリエンナーレが何をもたらすのか、などさまざまなトピックスがテーブルにあがりました。
アート業界の人間もいれば、学生や主婦もいたり、普段アートには全く興味がない人もいて、逆に余暇時間をすべてアートに注いでいる人もいるなど、さまざまな人がまじりあい、否定したり戦うのではなく、お互いの意見を取り入れながらのびのびと思考が広がり、生き生きとした議論の場となりました。

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次回は「まちづくり」。高知県のとある町の町長さんをゲストに、地域の人を巻き込んだ「まちづくり」についてトークがされる予定です。そのトークを受けたディスカッションがどのように展開するか、今から楽しみです。

<第1部:トーク内容>
まずは、進行の会田さんから、4回目のトリエンナーレにむけた「トリエンナーレスクール」の新しい試みと、テーマについて紹介がありました。

[会田]
今回から、前半レクチャーで、後半ディスカッションということになっています。こういうトークイベントの場合は、例えば2時間あったとすると、そのうちの80%から90%はレクチャーで、残りの10%は質疑応答という形で行くのが普通だと思います。
ただ、質疑応答と言っても、僕自身、結構手をあげるのに勇気がいったりして、思ったことをそのままズバズバと質問するということは難しいですし、良い質問と言うか、話が広がる質問の場合もあれば、そうでもないかな、という質問のときもありますよね。
でも、話を聞いたらいろんなことを考えますよね。レクチャーを聞いて考えたら、それを人に話してみたくなったりもするんじゃないかなと思うんですよ。
それで、「今日の話どうだった?」みたいなことを話す場をつくっていくということに、チャレンジしてみたいと思っています。

要するに、頭をグリグリと使うということです。いいことを言わなくてもいい。皆の前で喋るってなるといいこと言わなきゃいけないじゃないですか。
だけど、4〜5人ぐらいのテーブルでやりたいと思っているので、それぐらいの小さいグループだったら「正直さっきのトークってさ」みたいなことも含めて、自由に話すことができるかなと思っています。
あまり一般的な形じゃないと思うんですけども、皆さんのご協力をいただいて、生き生きとした議論になればな、と思っております。

あいちトリエンナーレのスクール事業には、以前トークする側として参加したことがあります。
ミュージアムエデュケーション、教育普及とはなにかということを話させてもらいました。2019って、あいちトリエンナーレが4回目になるんですよね。
僕も昔、山口県山口市の公的な文化施設で働いていたんですが、オープンして長く続いていくと、アート好きな人っていうのは絶対何らかの形で関わってくれるんですね。
一方で、アートがそれほど好きではない人っていう人も世の中にはいる。絶対いるはずですよね。
例えばでいうと、愛知県にはドラゴンズがあるので野球で考えると、僕は見るのは好きなんですけど、やらないんですよ。
自分が野球やらないんですね。地域にそれなりに綺麗なグラウンドってありますよね。芝生とかもメンテナンスして、それなりにコストもかけていい野球グラウンドが整備されてるんですけど、僕はやらない。
いくら野球が素晴らしいよって、野球をプレイするっていうのがどんだけ楽しいかっていうことを熱心に、例えば5時間説得されたとしても、たぶんやらない。
一回ぐらいやってもいいかなと思うけど、だからといってずっと続けていくわけではないし、いろんなスポーツを知っている中で、野球じゃないことが得意だなと思って、そっちの方に行きたいと思った気持ちを尊重してほしいんですよ。
アートについても同じことが言えると思っていて、今日こちらに来ていただいている方はみんなアートに何かしらの関心がある人かなと思うんですけれども、積極的にアートとは距離を置きたいという人もいたら、その人の意思を尊重すべきだと僕は思っています。

このトリエンナーレスクールをやるにあたって、アートそのものに積極的にコミットしない、関わらないけれども、例えば、街自体を愛している人とか、いろんな人に来てもらいたいなとは思っている。
今「アート」と言っているのは、美術史とかアート業界とか、趣味として商品化されている、社会の中での位置づけが決まっちゃっているようなアートのことです。
そういう、いわゆるアートだけをやっていきますと言っちゃうと、取りこぼしてしまうような人にも来てもらいたいと僕は思っています。

アートが好きではない人にとって、アートは何ができるんだろうということを思うわけですが、どんな仕事についていようとも、アート関係じゃない仕事についていても、趣のあること、つまり「アーティスティック」であることとか、創造的なこと、「クリエイティブ」なことっていうのは大切なんじゃないかなって思っています。
日本という国自体がどんどん変化していく中で、どんな時でもアーティスティックでありクリエイティブであるということは、見たことのない局面を打開していくために必要なことだと思っています。
人口が減っていきますし、いろんな見たことのないようなことも起きてくるでしょう。
そうなった時に、アーティスティックであること、クリエイティブであることっていうのは、おそらく我々の社会を前側に駆動していく力になるんじゃないかな、ということは疑っていません。
いわゆるアート業界とは違う意味でのアーティスティックとかクリエイティブっていうのが、この場で紡がれていくといいなという風に思っています。

テーマとしては、「視線」というのがすごくポイントになるのかなと思っています。

例えば「地元」っていう言葉ありますよね。地元っていうのは、やっぱり手触りのわかるような関係性で、いろいろな感情渦巻く場所でもあるかもしれない。
視線には「中」と「外」があって、地元の人(中)から見た地元(中)の問題。「外」からやってきた人から見た「中(地元)の問題。じゃなかったら、「中」の人にとっての「外」はどこかっていうこととか。
シリア難民の問題は多くの日本人には、残念ながら外のことってことになるんですよね。そして「外」から見た「外」っていうのはどこにあるのかとか。

いろんな視線が交錯するというところを、空閑さんにお話しいただく中で、ちょっと頭の片隅に入れておいてもらえると、すごく面白いんじゃないかなと思います。

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今回が最初の試みとなる新しいスクールの形式にワクワクしながら、「中」、「外」という視線の交わり、立場の違いなどを頭のなかでイメージしつつ、空閑さんからたくさんのスライドを交えて「d design travel」についてお話しいただきました。

[空閑]
編集者という風にご紹介いただきましたが、「d design travel」という、トラベルガイドブックをつくりました。その時は編集長として携わりました。
「d design travel」を知っている方ってどのくらいいらっしゃいますか?(会場にいるほとんどが挙手)じゃあ紹介しなくてもいいかな(笑)
このトラベルガイドブックは「D&DEPARTMENT」が発行するトラベルガイドで、僕は元社員という立場なので、個人的な立場から事実のみをお伝えしていきたいと思います。

「D&DEPARTMENT」は、デザイン会社なんですが、お店を持っています。「D&DEPARTMENT」から話すのは、ここと同じコンセプトでトラブルトラベルガイドをつくっているからです。
どんなものが売っているかと言うと、皆さんも一度は見たことがあるだろう、すごく定番的な商品ばかりです。ただ一つのコンセプトで全てのものが集められています。
それが商品のPOPに現れています。すべての商品に生産業者、デザイナー名、商品名がついていて、この辺りまでは普通ですけれども、右端に大きめに数字が書いてあります。
これは、発売されてから◯年目、という意味です。つまり何がこの商品の信頼性を担保しているかというと、41年なら41年間という時間が担保している、41年間愛され続けていますよと。
これが、たくさんの言葉でいろんなことを言って、この商品の価値を説明したりするよりも、41年つくられ続けています、ということの方がもう証明になるというふうに考えて。基本的にお店にあるすべての商品についています。

時々、1年目とか3年目とかっていうものもあります。これからロングライフになっていくだろう、ロングライフの要素が詰まって新製品として開発されたものだから、こういうものは応援していこうということで、商品を取り扱う場合もある。
あるいは、昔からあるけど誰が最初に発売したのかわからないものもあって、そういうものには横線が引いてあります。

もう一つ、自分たちが販売したものは全て、メーカーに問い合わせて修理可能か確認してから販売する。つまり、簡単に使い捨てにしないで、長く使い続けてもらうっていう風なことをコンセプトにしています。

例えば、企業のノベルティとかは簡単に使い捨てにしちゃうけど、「D&DEPARTMENT」のロゴを印刷してダブルネームにしてリサイクル品という大きい枠で販売するとか。
日本には生地産地がたくさんあるんですけど、そこで流行遅れで倉庫に眠っている、端切れじゃなくて巻きの状態でたくさん眠り続けている生地でトートバックをつくるとか。
愛知県も毛織物産地だったので、愛知号が出た時には愛知県の織物でトートバッグをつくって販売したりしました。
あとは、地元の野菜など生鮮食品も少し販売しています。東京店の野菜は東京産の野菜、静岡店で売るのは静岡産の野菜ということをやっています。

そんな「D&DEPARTMENT」で、東京だけで発信するんじゃなくて、日本全国にそういうものがあって、それを東京の人が発信するというよりは、地元から発信するようなことができないだろうかという考えになりました。
本当は「D&DEPARTMENT」というお店を、47都道府県全部につくって、そこを拠点にして活動していきたいんだけど、実際出店はなかなか難しい(といっても、10店舗あるんですけど)。
で、トラベルガイドをつくろう、となりました。つまり、地元の良いもの、長く続いていくもの、長く続いていくべきものを探そう、それをトラベルガイドという形にして出版することで、より多くの人に関心を持ってもらえるんじゃないかと。
デザインに興味がなくても、食べ物に興味がなくても、あるいは生活用品に別にこだわりがなくて、今ある大量生産品でいいやと思っている人にも、トラベルガイドであれば行ってみたいという考え方で購入してもらって、読んでいるうちに知らず知らずのうちにその土地の魅力に気づいてもらえるんじゃないかと。そ
んなことで、2009年に「d design travel」を創刊しました。創刊号は北海道で、鹿児島、大阪、長野、静岡、栃木、山梨、東京、山口(会田さんには実はここでお会いしました)、 沖縄、富山、佐賀、福岡、山形、大分、京都、滋賀、岐阜、愛知、埼玉と、ここまでが僕が担当した号で、そのあと群馬、千葉と今もシリーズが続いていて23号まで出ています。
47都道府県すべての号を出すことにしているので、あと24号。ようやく半分ですね。順番は得に決まりがなくて、無軌道ですね。

[会田]
滋賀・岐阜・愛知は比較的近い順番ですよね。

[空閑]
そうなんですよね。京都から隣へ隣へきたんですよ。岐阜が思いのほかいいものになったんです。表紙が熊谷守一っていう日本を代表する油画家で、使えると思ってなかったのに表紙にすることができて。
知らなかったけど、岐阜ってすごいおしゃれだったんですよね。かっこよかったんです。で、その次に愛知に来たら、どちらかというと、のんびりしたと言うか、ほっこりしていて、なんか逆のイメージでした。
愛知といえば名古屋があって、都会というイメージがあったんですけどね。

で、1年間に3号ずつ刊行しているので、4ヶ月で1冊出している計算になるんですよね。
少人数でやっているので時間かかっているんですが、つくりかたが決まっています。
山口号からこのスタイルをとったんですけど、地元の人と一緒に最初に考えるということをしています。

どんな場所を取材するのがいいのか、というのを自分たちで勝手に考えない。地元の人たちがいいと思う所をまず聞く。
何も方針がなかったら、みんな勝手に好きなお店とか、雑誌に載ったりテレビに何回もでてるからいいとか、そういう話になりかねないんですよね。
自分の弟がやってるお店とかに強引に誘われちゃうとか、なんなら自分がやっている店という人もいますからね。
編集のコンセプトにすべてあてはまっているところを紹介してもらうようにするんです。

取材対象を選定するときの考え方を編集部としても創刊号から貫いてきているので、それをワークショップ参加者にも押し付けて、一緒に考えてくださいという。これ意外と難しいんですよっていうことですよね。そのときの方針が次の5つです。

「その土地らしいこと」
もうわかんないですよね。最初から難しいですよね。
愛知らしいことって何だろう、愛知県らしいって何だろう、もう少し細分化して名古屋らしい、豊橋らしいって何だろう、もっといったら自分が住んでる街とか、お店が醸し出してる雰囲気ってなにか統一感があるんだろうかっていうことを考える。

「その土地の人がやっていること」
例えば、普段東京に住んでいる人が時々やってきて指示出ししてやっていることじゃなくて、長らくそこに住んでいる人がやっている、あるいは移住してきてもその土地に完全に馴染んでいて、もう地元民だよね、という人がやっていること。

「その土地らしいメッセージを持っていること」
1つ目とだいぶ重なるんですけど、もう一押しって感じですね。

「利用額が適切なこと」
やっぱりどんなに良くてもご飯食べに行って1度で10万円って言われたら、無理ですよね。地元生活者として利用できる場所や物ということです。

「デザインの工夫があること」
美しいこと、と言うか、いわゆるデザイナーズってわけじゃなくて、その土地らしいということを適切に表現しているような意味でのデザインです。

これら5つの項目を全て満たしたものを6つのカテゴリーから選定します。

「sights=観光」見て楽しんだり、経験して楽しんだりするもの。
「restaurants」郷土料理の食べられるようなお店。
「shops」お土産を買えるようなところ。
「cafes」カフェ、居酒屋、バーとかも入れていますね。
「hotels」ホテルだけではなくて、旅館とかゲストハウスとか、宿泊できる場所だったら全て。
「people」キーパーソン。その土地を盛り上げているキーマンのことです。

地元の人とやるワークショップでは、2つまで絞り込んでもらいます。だいたい10人ずつで6グループぐらいに分かれて、30分相談してもらうんですけど、もう、てんやわんや。
初めて会った人同士なのに、やっぱり地元のことを考えたいとか話したいとかっていう想いが強くて、すごく白熱します。
そして最後にそれぞれのグループで絞り込んだ2つの候補先について発表してもらいます。

このワークショップでは全部で12の取材候補がでるんですけど、やっぱり紹介したい、と思うところをアンケート用紙に自由に書いてもらうんです。
そうすると、もうビッシリ。ワークショップの意味あったのかなって。ちなみに、愛知でワークショップしたときに出てきた場所をGoogleでマッピングをするとこんな感じです。

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[会田]
うわーっ。

[空閑]
多分200箇所ぐらいありますね。クリックするとアンケートとかでみなさんが書いてくれたコメントが出てきます。
基本的には全部行こうと思ってるんですけど、取材時間は限られてますので全部は行けなくて。
大体2ヶ月間ぐらい滞在して取材するんですけど、宿泊先も取材候補になっているところです。本当に全て自分たちで体験して本にしていくという方法をとっていました。

取材とかの様子はずっとTwitterでアップしていて、初めて名古屋にきたときの投稿は「2016年3月20日桜通線で久屋大通駅というところまで行きます。何もかもが初めて」という初々しいスタートで、こんなの見て感動してるんですよ。
「バス停が左車線じゃなくて中央分離帯のところにある!何これ?」みたいな。本には載ってない感動もこういう風に出ていたりします。
このころは、岐阜号の出版イベントなんかもしながらでしたね。間の時期はどっちにも行くんです。
出版記念イベントを東京じゃなくて現地でやってきたので、名古屋で取材を始めながら、多治見で出版イベントをやるっていう。

[会田]
だからだんだん取り上げる県が近づいて行くんだ。

[空閑]
その方がいいんですよ。東北と九州で行き来してたら大変ですし、実際、関東の次が九州だったとかあったんで。
こういう取材の様子が気になる方は「d design travel」のTwitter アカウント「@d_design_travel」で期間検索をしていただければ、いろいろな号の当時の投稿が出てきます(愛知号の投稿はtwitter内の検索で from:d_design_travel since:2016-03-21 until:2016-任意の日付 を入れると出てきます)。

ワークショップでは、外と中の人がどう思ってるかっていうのを聞くんですね。そ
れで本当にいいと思っているかどうかって、わかんないこともあって、東京の人へのプレゼンになっている場合があるんですよね、多分。誰に説明しているかって結構重要で。
「D&DEPARTMENT」のことを知っている人は要注意というか、こういうことでしょ、みたいなプレゼンをされる場合もあって、だいたい外れるんですよね。
また、あまりにも盛り上がり過ぎた場合に、おじいちゃんの柿が美味しくてという話が出たりするんですけど、お店はしてないので買うことはできないけど、すごく美味しいから紹介したいと。でも、掲載できないよね、となる。
僕たちが特別にそこに行かせてもらって、その素晴らしさを伝えるということも、必要なことかもしれないんですけど、あくまでも一般の人が利用できる場所に限って紹介しようと。
裏口からは行かない。読んだ人が、同じように明日行ったとしても体験できるものを基本的に載せています。

候補先をしぼるのはこんな感じですが、みんなからもらった情報をもとにどうやって本にしていくのか、というのも決まっています。

「必ず自分たちで利用しましょう」
タダで料理を出してもらったり、写真だけ撮って一口だけ食べて終わりとか、そういうことは絶対やらない。
自分たちでお客さんとして普通に予約して、あるいは並んで食べて、宿の場合もちゃんと予約したり電話で聞いたりして手配する。取材に行く時も、自分たちの車や自転車、足で実際の道のりを体験していく。
とにかく、自分で体験しないと記事にしないんです。自分で体験して、それで本当に感動したら、取材させてもらって、その感動をそのまま書きます。

「取材対象になにか問題があっても、素晴らしければ問題を指摘しながら進める」
ちょっと複雑なことですよね。例えば、すごい行きづらい、宿の壁が薄い、テレビがない、愛想が悪い、サービスが悪いなど、いろんな問題があってもその理由をちゃんと書くんです。
山梨産のワインを出しているぶどう園に立つ民宿があって、民宿のオーナーは作り手を引退しているおじさんで、めちゃくちゃ愛想が悪い。
施設もそんなに良いわけではない。でも、ご飯はたっぷり出てくるし、ワインのことをちょっと聞いたら、「ワイン好きなの?」って感じでいろいろと教えてくれる。
何も知らないで行ったら、あんまり良くなかったな、で終わっちゃうかもしれないけど、ちゃんと事情や情報をわかって行くとこんなにすごいところなんだよって、そういうことをちゃんと伝えられるようしたいと思っています。

「原稿チェックは事実確認だけ」
感動したことだけを書く、ということなんですが、それなりに大手のホテルとか商店だったりとかすると、例えばお風呂とか景色とかの表現方法が決まっていたり、使う写真も宣材写真みたいなのがあったりして、原稿にすごい赤入れされることもあるんですけど、「僕はそういったところはどうでもよかった」、「僕はこれがいいと思うからこういう風に書く」、「なので、この原稿でダメだったら掲載諦めます」というスタンスなんです。
実際はそこまでラジカルにしないで、訂正案を出したりはしますけど、基本的には創業年とか調味料とか価格とか、事実だけをみてもらっています。
表現の仕方とかアピールしたいものを変更することは、絶対にやらない。

「長く続くものだけを取り上げる」
今年だけのイベントじゃないもの、最近はじまったことだとしても、長く続いていくもの、続けていく覚悟がある人たちのことを紹介しようということです。

「写真は特殊レンズを使って誇張しない。ありのままを撮影する。」
カメラマンは連れて行ってなくて、iPhone で撮ることもあります。けっこうラフな感覚で写真を撮っています。
料理の写真撮るのってすごく難しいんですが、エアコンで温度を下げて湯気を立ちやすくして撮影するとか、そういうことは一切しません。宣
材写真とかお店にもらってそれを掲載している雑誌とかも多いんですけど、どれを見ても同じ写真が載っているという場合もあって、そういうことする本って面白くないんですよね。

「取り上げた場所とは継続的に交流を持つこと」
取材して終わり、本が出たら終わりじゃなくて、ずっと交流を続けていくこと。
出版記念イベントを東京じゃなくてその地元でやるとか、取材したぶどう園に読者の人と出かけて、摘み終わった時期の枝の剪定作業を見学したり、益子焼の工房で器作りのワークショップを体験させてもらったり、「D&DEPARTMENT」に商品を置いたり。東京にある銭湯で、毎年1年が終わると全部の桶を取り替えているところがあって、まだまだ綺麗な古い桶を引き取って販売したり、愛知号のときには、「まるや」さんの八丁味噌をレストランで出したり、味噌を販売したりもしています。

こんな感じで「d design travel」ができています。

[会田]
とても1時間じゃ終わらない量のスライドがあるんですけど、ちょっと聞きたいポイントがあって、編集者のパーソナリティーって本をつくるときにすごく影響すると思うんです。
立場から離れて、空閑さん自身が大切にしていたポイントがどんなところなのか、詳しく聞きたいです。空閑さんて「感動しい」ですよね。
だから情にほだされちゃうこともあったりするのかなって。一方ですごく冷静に判断するところもあると思うんですが。

[空閑]
確かに「感動しい」ですけど、情報(つまり言葉とか映像)で感動しているわけじゃなくて、五感を使っているので、感動ポイントのハードルがいくつかあります。
創業◯年って聞いたらまず感動するけど、行ったらすごく汚いとか、素敵なおしゃれなお店だなと思っても、料理が美味しくないとかだったらダメだし、実際に使ってみたら他の方がいいとか、ネガティブな感動をする場合もあるわけで。
実際に自分で使ったり、体験したりしてどう思うかというのは、僕しか持てないものだけど、そこはすごく大事にしました。
本としてのコンセプトは「感動しないと取り上げない」だけど、僕が本当に感動しているかどうかっていう個人的なレベルでは、すごく統一感を持って正直にやっていました。

自分の後、ナガオカさんが編集長に戻ってますけど、一緒にやってきた人たちはみんな残っていて、コンセプトは同じだけど、感動しているものや質っていうのは変わっているだろうな、と思います。

[会田]
もう一つ、毎回「d design travel」の表紙ってインパクトがあって、度肝を抜かれるんだけど特に愛知号の「オリエンタル坊や」は、そうくるか、ってびっくりしたんですけど。
これに決まるまでのエピソードと、打ち合わせのときに伺ったメジャーリーグのチーム「インディアンズ」の話について、お話いただけますか。

[空閑]
僕も正直これになるとは思ってなくて。「まじかぁ」って。愛知の人怒るんじゃないかなって思いました。
表紙は、その県の顔になるので自分たちでデザインしないようにしています。つまり、創出しない、勝手にイメージをつくりあげずに、その土地にあるもの、その土地のデザインを使っています。

例えば、福岡は明太子のお店の袋のデザインとかなんですけど、愛知の表紙もいろいろ候補が出ていて、トヨタ博物館のお土産のお菓子の缶、愛知県出身のグラフィックデザイナーによる小説の装丁、両口屋是清、ミツカンなど、いろいろありました。
ただ、「オリエンタル坊や」がやっぱりすごくよくて、逆に候補に入れないように注意していたくらいなんです。これを愛知の顔っていうと、なんとなく違うだろうなと思ってたんです。
でも、はめたらすごくしっくりきて。なので、「僕がこの子を好きになれるか」を考えたんです。
催事で大きい「オリエンタル坊や」の人形がくるんですけど、その横に並んだりしてたら、最初苦手だったけど好きになってきて。少なくとも邪気はないし、いいんじゃないかなって。

「インディアンズ」の話が出たのは、このチームのロゴマークがインディアンの顔で、今シーズンからなくなることになったらしいんです。
差別表現になるかもしれないということで。「オリエンタル坊や」に決めた時、個人的に実はいろいろと懸念していたんです。
当時、オバマ大統領あたりからの発信で「オリエンタル」が差別的ではないかという認識が広まっていて。

[会田]
つまり、「オリエンタル」というのは、フロンティアからみた東洋の認識に過ぎないので、そういう言葉を使うのはどうかという。
「言葉狩り」みたいなことになりかけていたんですよね。

[空閑]
ただ、「オリエンタル」という言葉が出てきた時代、その言葉はすごくポジティブにとらえていて。「d design travel 滋賀号」のときも、真珠の生産地で「オリエンタル」は良い意味で使われてて。
この言葉をみんなが同じ感覚で使っているわけではないけど、巨大な何かの考え方によって禁止されちゃう。

[会田]
誰かわからない、姿のわからない、見えない「外」っていうことですよね。

[空閑]
そうそう。誰なの?っていう。でも僕は心配で。さらに「オリエンタル坊や」の人形って肌が黒いっていうか、茶色で。
褐色の肌をした男の子のバージョンが通常なんですが、グラフィックになったときに白くなってるんですよね。
なんで、白くしているんですかっていう人もいるかもしれない。ナガオカさんに懸念を相談したんですけど、大丈夫だよって、誰が言ってるのって。
そういえば、誰も言ってないなって。出版してみたら、記念イベントとかツイッターとかでも、表紙について言っている人はだれもいなかったんですよね。
オリエンタルカレーが表紙ってわかるよねっていう人もいれば、なんでオリエンタルカレーなの?っていう人も一定数いたりして、それなりの議論を起こしたんですけど、心配していたところとは違うところの議論で、取り越し苦労だったなって。
今までで一番インパクトがある表紙を、いろんな心配をしながらだけどつくれてよかったなと思っています。

[会田]
今日の空閑さんの話を聞いて、やっぱり最初に紹介した「いろいろな視線」を象徴的に示してくれたと思って。
「d design travel」の話では、地元の人(中)にとっての地元(中)と、地元の人(中)が外に紹介する時の地元(外を意識する中)は違っていることとか、外の人が見ている内側っていうのも、その外の人が自分を外側と自覚しているかどうかでその内側の見え方も変わってくるんだけど、それぞれの立場が常に揺れ動いていてるとか、つまりいろんな視線が入れ子状になっているということが見えてきて。

今回トリエンナーレを考えていく時に、単純に地方都市に行われているアートイベントであるということ以上に、アート自体が日本においてどんな内側・外側関係にあるのっていうことが大事で、アートの内側にいる人にだけ喜んでもらえば良いということではない、ということも含めて、考えるポイントになりそうだなと思いました。

いくら自覚しても自覚しきれないことなんですよね。自分の後頭部をリアルタイムで自分で見られないとの同じようなことで、あまりにも近すぎるものって、見えなかったりするので、そういったことを頭の隅に置いておくだけでも、議論していく時の言葉の一つ一つが変わってくるだろうなと思っていて。

第1回目の議論で、空閑さんからお話をお伺いできたのはすごく面白かったですし、今日こういう話ができたのはよかったなと思っています。

<ディスカッション>
今回のスクールから実験的に取り入れたディスカッション形式の第2部。「ワールドカフェ」の手法を用い、全員が参加するディスカッションが行われました。
7つのテーブルにそれぞれ4〜5人ずつ着席し、スタートしました。テーブルの上には大きな紙が敷かれ、付箋と色違いのペンが配られました。
知り合いとは別々のテーブルになるようにし、まずは簡単な自己紹介からはじまり、各テーブルで今回のトークに関する意見や感想などが自由に議論されました。
10分間隔で、一人だけ残して他の人たちがテーブルを変わり、メンバーがシャッフルされていきます。
テーブルに残った人は、メモなどをみながらそのテーブルではどんなことが話されたのかを簡潔に新しいメンバーに伝えます。
前に議論していたことを少しだけ受け継いで、話を展開していきます。
最後に発表などはせず、とにかく意見を交わすことに主眼を置いて実施しました。

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40分間のあいだ、シャッフルのタイミングを告げる会田さんの声がかき消されるほど盛り上がり、終了後も熱冷めやらずといった具合で会場にとどまり意見を交換する参加者の方が多くありました。
それぞれのテーブルでどんな議論が生まれたかその一つ一つを詳細にお伝えすることができずに残念ですが、残されたメモや参加者からお聞きした内容を簡単にご紹介します。

  • 「d design travel 愛知号」の表紙について。「オリエンタル坊や」は愛知の顔なのか?30代以下の世代ではオリエンタルカレー自体に馴染みがない事実が発覚。これは空閑さんも驚く。「スーちゃん」こそが愛知の顔では?という意見も少なくない。

  • 「視線」について。中から見た中って難しいかも。一度、地元(中)から離れて、再び帰ってくると、中の人だけど、外の視線で中をみつつ、中のことを考えているという、確かに「入れ子状態」になっている。

  • 「中から見た中」「外から見た中」「外から見た外」「中から見た外」の4分割の表現じゃなくて、もっと複雑、多角的である。

  • 「◯◯らしい」ってどういうこと?たくさんの人が同意したことが「らしい」になる?一部でも「らしい」と思えば、「らしい」を形成することになる?

  • その土地の特色を見つけるのは面白い。

  • 愛知は歴史が複雑で難しい。歴史が水だとしたら、その水が入っている深いバケツの水深5cm程度しか普段みえていないような感じ。

  • 愛知は「経由地」という認識が強いのでは?北陸や東北、あるいは関西方面へいくときの経由地になっていて、名古屋では家電量販店に行くという外国人観光客も多い。そういう人たちに魅力をもっと伝えたい。そこに「アート」があるといいのでは。アートは敷居が高いと言われるが、逆に「意識高い系」は行動力もあるから、アートで人を呼ぶことができる。国籍は関係ないので、もっとトリエンナーレなど愛知のアートを発信すべき。

  • アートに興味がない人をどう呼び込むのか。アート以外のことでもっとブランディングするべきなのか。

  • 「編集」はどのように行われたのか。取材候補の選択や、取材方法は今回紹介されたが、それらをどのように編集したのかが知りたい。取捨選択をどのようにしたのか。

  • 「愛知色」について。愛知で、生まれて・育って・学んで・働いて・結婚して・子育て、という人の割合が他県に比べて圧倒的に多い。母娘が仲良し。保守的。外に出ない。

  • 愛知の人が愛知を好きになるためには?

ここにざっとあげた以外にも、本当にたくさんのことがテーブルにあがり、何人もの頭や口を経ることで複雑につながりあい、発見や驚き、新しいインスピレーションが生まれたりしました。
レクチャーの内容をすぐにその場で議論することで、より密度の濃い体験とすることができました。また、今回のこの形式で「同じ時間、同じ空間を共有する人」たちとつながることができたことも大きな成果でした。
2010年にスタートし、3年ごとのトリエンナーレに向けて開催されてきたスクールでは、毎回お見かけする方も増えてきています。
ただ、これまではその方々の声を聴く機会はほとんどありませんでした。あの人今日もいるなと、毎日偶然電車に乗り合わせる人のような感覚だった人たちと、ディスカッションをすることで少し距離が縮まったような気がします。
このディスカッションが毎回のスクールにあることで、新しいつながり、コミュニティができたらと思うとワクワクします。

もう一つ、今回はアートに普段全く興味がない、という方もちらほらいらっしゃいました。
次回は「まちづくり」がテーマ。どんな人々がスクールに参加されるか、今から楽しみです。

(レポーター:松村淳子)

*ワールドカフェ
カフェのようにリラックスした雰囲気の中で、テーマに集中した対話を行う。相手の意見を否定せず、受け入れながら自分の意見を伝える。メンバーの組み合わせを変えながら、4~5人単位の小グループで話し合いを続ける。