2019年6月4日 その他

「山口一郎×あいちトリエンナーレ」トークイベントレポート

「山口一郎×あいちトリエンナーレ」トークイベントレポート

出演:山口一郎(サカナクション)、津田大介(芸術監督)、大山卓也(音楽プログラム キュレーター)

5月31日、愛知県蒲郡市で行われた音楽フェス「森、道、市場 2019」でサカナクションの山口一郎さん、芸術監督の津田大介さん、音楽プログラムのキュレーター大山卓也さんによるトークイベントが行われました。
テーマは、サカナクションが8月7日(水)から11日(日)まで、愛知県芸術劇場大ホールにて行うプログラム『暗闇 -KURAYAMI-』について。
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まずは大山さんが「音楽だってアートでしょ、ということから今回のトリエンナーレでは新たに音楽プログラムが組み込まれました。それで真っ先にオファーしたのがサカナクションだった」、津田さんから「一郎さんは現代アートも好きだし、音楽と美術の中間にあるような表現をずっと続けてきた。だから何かおもしろい試みをやってほしいと思ったんだけど、真っ暗闇でライブをするという予想以上のプランが返ってきて驚きました」と公演の実現にいたる経緯を説明。

対して山口さんは「本当はちょっと怖かったんです」と、その心境を明かしました。
「トリエンナーレというアートのイベントで、美術に対する哲学もあって、そこに僕らみたいなエンタメのミュージシャンがちゃんと調和できるかやっぱり不安ですよ。でも今の時代に、音楽とアートを繋げられるハブのような存在って絶対に必要だと思ってたし、新しい挑戦としてやってみようかと。ただ、普通のライブをするわけにもいかないし......って考えたときに、真っ暗闇に音楽が流れていたらどうなるかな、と思いついたんです」(山口)

暗闇で新しい感情を発明したい

『暗闇 -KURAYAMI-』は約1時間の公演になる予定。演出プランや公演のための新曲など、着々と構想も練られているそうです。

「何も見えない暗闇で音楽を聴くと、どんな気持ちになるか。世界でも初めての試みだと思うし、やってみないと何が起こるかわからない。1時間ずっと暗闇だったら体調を崩す人がいるかもしれないから、15分×4セットで1公演、という構成を考えてます。それぞれにテーマを作って、トラックも新たに作ります。サウンドインスタレーションのイメージだから、サカナクションの知ってる曲がたくさん聴けると思って来ると、ちょっとイメージが違うかもしれないけど。楽しみ方が普段とは違うってことだけわかっておいてもらえれば大丈夫」(山口)

これについては大山さんも「いまは日本中に音楽のイベントやフェスがたくさんあるけど、同じような内容が多くて飽きているファンも増えてきたと思うんです。でも今回は、サカナクションのヒットソングは聴けないかもしれないけど、ここでしか見られない公演であることは間違いない。新しい音楽体験をすることで、今まで味わったことのない新鮮な感情が呼び覚まされるといいなと思ってます」と期待を語りました。

"感情"というキーワードは、トリエンナーレ全体のテーマでもある「情の時代」というコンセプトとも合致します。

「このテーマには『情報』や『感情』、"なさけ"と読む『情』などの意味を込めてます。複雑な時代になったからこそ喚起される、訴えかけてくる感情ってきっとあると思うんです。だからサカナクションの公演でも、呼び覚まされたことのない新しい感情が沸くのを楽しみにしてます」(津田)

「僕が興味を持ってるのもまさそこで。ボストン・ダイナミクスっていう会社が作った四足歩行ロボットの動画、知ってます? 性能のテストとして、大人がロボットを蹴り飛ばすんですよ。それでも倒れない......というアピールなんだけど、僕はそれを見たときに『すごい』と『かわいそう』という感情が同時に出てきたんです。そんな気持ちになるのは初めてで、これは何だろうって興味深かった。だから僕も、自分のステージで新しい感情を発明したいということはいつも考えてますね」(山口)

アートファンも楽しめる、体験したことのないライブ

さらにトークは進み、山口さんが現代アートを見るようになったきっかけも明かされました。

「音楽を作り始めたときは、やっぱり初期衝動だったんです。でもそれだけでは難しくなって、『なぜ作るのか』と日々考えるようになった。それで気付いたのは、現代アートでは紙をクシャクシャにしてテーブルに置いた作品が数千万円で売れることもあるんです。つまり作品に込められた想いやコンセプトがすばらしければ、そこにお金を払ってくれる人がいるということで、すごく遊び心があるなって。だから僕も自分のコンセプト、たとえば思春期のころに感じていた違和感とかをしっかり表現して、理解してくれる人たちと繋がれる、遊べる場を作りたいと思うようになった。そのために新しいことにもチャレンジしたいし、トリエンナーレもその一貫ですね」(山口)

トーク会場に集まったファンは登壇者3人の言葉にじっくり耳を傾けており、「まさにこういう温かいファンが集まる場所を作ってきたってことですよね」と津田さんが納得する場面も。

さらに津田さんは「トリエンナーレでサカナクションを観たみなさんには、アート作品にも触れてほしい。同じように、アートファンにもサカナクションを観てほしい。すごく親和性が高いと思うから、必ず感じるものがあるはず」と、芸術祭で音楽プログラムが行われる意義を語りました。

最後に、トリエンナーレでの意気込みを聞かれた山口さんは「体験したことのないものが詰まったライブになるし、会場に来てくれないと楽しめない試みです。これからたくさん実験をして、最高の体験を作りますので、ぜひ来てください」とメッセージを送り、トークイベントは終了しました。
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(レポート:田島太陽)


『暗闇 -KURAYAMI-』
会場:愛知県芸術劇場大ホール
公演日:2019年8月7日(水)・8日(木)・10日(土)・11日(日)
時間:昼公演 14:30開場、15:00開演 夜公演 18:30開場、19:00開演
※8月7日(水)については、夜公演のみ
料金:S席 5,800円 A席 4,800円 B席 3,800円
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