抽象・家族
- 《抽象・家族》 2019
抽象絵画、家族写真、ドキュメンタリー映像、テキスト、ダイニング・セット、といった多くの要素が展示室内に存在しています。それぞれが個別の作品というよりも、全体で一つのインスタレーションを形成しており、鑑賞者は展示室内を自由に歩き回ることができます。
各要素を繋げているのが、三カ所で流れている映像です。合計で約1時間50分の映像ですが、インスタレーションの中で断片的に観ることも想定された構成となっています。展示室内を回遊しながら鑑賞することで、作品の背景や各要素の関わりが明らかになっていきます。
作品では、日常生活を営む場所である一軒家や、演劇環境としての劇場を織り交ぜながら、両親のいずれかが海外のルーツを持ち、かつ日本に暮らす出演者たちの家族史や個人史が描かれています。素朴なドキュメンタリー映像とは違い、シーンによって語り方や互いの呼び名が変化していきます。
世の中には「当事者しか語り得ない物語」がある一方で、この作品には「当事者ではない人はいかに語り得るのか」という問いが潜んでいます。時に私たちは、既に知っている事実に対して「自分とは関係のないこと」だと無関心を決め込むこともできますが、逆にそれらに対して、思いを馳せたり、心を寄せたり、語り合うことも可能なのです。
田中功起
- 1975年栃木県生まれ
- 京都府拠点
「複数の人間が、過去、現在、未来において、ある出来事や経験を共有することは可能か」という問いをめぐり、記録映像やインスタレーションの展示、テキストによる考察、トークや集会の企画など多様な方法で探求している。撮影のために組織される仮構の共同体で生じるズレや失敗も含め、個人や集団の営みを凝視し、その内と外にある社会、歴史、制度を含めた考察そのものを作品の一部として開示。その根底には、現代アートを取り巻く既存の枠組みや制度を検証し、再定義しようとする批評性が貫かれ、作品制作と並行して執筆や言論活動も精力的に展開している。
主な作品発表・受賞歴
2018 | 個展「Vulnerable Histories (A Road Movie)」ミグロ現代美術館、チューリッヒ(スイス) |
2017 | ミュンスター彫刻プロジェクト2017、ミュンスター(ドイツ) |
2017 | 第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ「VIVA ARTE VIVA」ヴェネツィア(イタリア) |
地図
愛知県美術館(10F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 10階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分