旅館アポリア

  • あいちトリエンナーレ2019の展示風景
    《旅館アポリア》2019
    Photo: Takeshi Hirabayashi

ここ喜楽亭は、大正期から昭和期にかけて使用された料理旅館です。戦前は養蚕業の従事者、戦中は海軍の軍人、戦後は自動車産業の関係者で賑わいました。ここは、戦争末期に沖縄の米軍艦隊に突撃した神風特別攻撃隊の草薙隊が、この地を発つ最後の夜を過ごした場所でもありました。この「旅館アポリア」の登場人物は、彼ら特攻隊、戦中の京都学派の思想家たち、そして宣伝部隊として南洋に派遣された映画監督の小津安二郎や漫画家の横山隆一といった文化人たちです。彼らの様々な人生と運命は、軍国主義が反近代主義と解放への展望と分かちがたく結びついたこの激動の時代に、多様で複雑、しばしば矛盾した思想的・時代的背景があったことを知らせます。「旅館アポリア(難関)」は、秘められた歴史を呼び覚ます舞台となります。この作品は、埋もれた記憶と忘れ去られた記録の間に揺らめく相矛盾する文脈を縫い合わせ、悲劇的な生を閉じた人々を含む意識の層を開いて、予期せぬ共鳴を見出します。過去の史実は、彼らの悲劇の圧倒的な力の中で、なおかつ眩いフィクションを孕みがら、妖しい霊のように私たちの前に立ち現れるでしょう。

ホー・ツーニェン

  • 1976年シンガポール生まれ
  • シンガポール拠点
  • Photo: Matthew Teo
    Courtesy of ArtReview Asia Spring 2017


1965年に独立するまで、彼の出身地であるシンガポールは、19世紀は英国領であり、太平洋戦争中は日本の軍政下に置かれていた。彼は、歴史の記録や伝承を丹念にリサーチし、アジア全域にまたがる複雑な物語を美しい織物のように紡ぎ出す。その作品からは、単一的な視点を越えた、多層的なアジアの歴史が透けて見えてくる。映像、インスタレーション、サウンド、演劇といった従来のジャンルを自由に横断しつつ展開するその世界観は、壮麗さや優雅さをまといつつ、虚構と真実の間で「正史から抜け落ちた物語」を亡霊のように蘇らせる。彼の語りによってめくるめく変化をとげる歴史が、時に暗く、時に妖艶に観る者を魅了し、現代につながる近代以降のアジアの問題に光を当てる。

主な作品発表・受賞歴

2018 個展「The Critical Dictionary of Southeast Asia Volume 3: N for Names」クンストフェライン・ハンブルク、ハンブルク(ドイツ)
2014 Asia Pacific Breweries Signature Foundation Art Prize 2014、シンガポール美術館、シンガポール、大賞受賞
2012 個展「MAMプロジェクト016:ホー・ツーニェン(何子彦)」森美術館、東京
2011 第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ、シンガポール館、ヴェネツィア(イタリア)

地図

喜楽亭

所在地

〒471-0034
愛知県豊田市小坂本町1丁目7

開館時間

10:00-17:00
入館は閉館の15分前まで

休館日

月曜日(祝休日は除く)

バリアフリー

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アクセス

・名鉄「豊田市」駅下車 徒歩9分
・愛知環状鉄道「新豊田」駅下車 徒歩5分
・名鉄バス「豊田市」下車 徒歩9分

問い合わせ

052-971-6111