Woodstock 2017
あいちトリエンナーレ2019の展示風景
《Woodstock 2017》2017
Photo: Takeshi Hirabayashi
《Woodstock2017》は、2017年に制作された映像作品です。4名の白人男性が、ロープで繋がれた状態でアメリカ国歌"The Star-Spangled Banner"を演奏している様子が記録されています。滑稽に見えるその様子も、まったく笑顔を見せずに必死に格闘している演奏者達の様子や、滞在中の米国でトランプ政権誕生を目撃していたという作家のエピソードなどをあわせると、にわかにシリアスさを増します。
《2679》は、《Woodstock2017》と対になる新作で、同じくロープで互いに 拘束された状態で演奏する3名の和楽器奏者の様子が記録されています。各演奏者はそれぞれ、英国と日本、ニュージーランドと日本、朝鮮と日本というルーツを持っていて、実際に多様なルーツを持つ人々が暮らしている日本の状況が想起されます。
拘束された状態での演奏は、SNSなどのテクノロジーによって相互監視状態が生まれ、むしろ自己規制が自動的に促進されている今日的な社会状況のようにも見えます。これら2つの作品は、歌や音楽という身体性を伴った表現が共同体を想像力で強く結びつけるメディアであることを表す一方で、抑圧の利いた統制についても象徴していると言えるでしょう。
加藤翼
- 1984年埼玉県生まれ
- 東京都拠点
災害、都市開発、資源採掘などによってコミュニティ解体の危機に晒された国内外の様々な地区に滞在し、簡易的に作った大きな木製構築物を地域の人々とロープを使って引き起こす「引き興し」のプロジェクトで知られる。近作では、互いにロープで縛られたミュージシャンが四苦八苦しながらアメリカ合衆国の国歌を演奏する作品など、新たな展開を見せる。いずれの身体性を伴った協働作業も、一回ごとに完結するパフォーマンスとして実践されるが、彼はその様子を複数のアングルで捉え、映像作品化する。人々にもたらされる連帯感や達成感が映像で再提示されることで、刹那的な共同体の脆さや儚さ、コミュニケーションにおける緊張と解放などの両義性も表される。
主な作品発表・受賞歴
2018 | 「カタストロフと美術のちから展」森美術館、東京 |
2017 | 「歴史を体で書く」国立現代美術館、果川市(韓国) |
2016 | 「Uprisings」ジュ・ド・ポーム国立美術館、パリ(フランス) |
2016 | 「蜘蛛の糸」豊田市美術館、愛知 |
2015 | 「他人の時間」国立国際美術館、大阪 |
地図
愛知芸術文化センター アートスペースX(B2)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 地下2階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分