進化の衰退
- あいちトリエンナーレ2019の展示風景
《進化の衰退》2019
Photo: Ito Tetsuo
巨大なグラフィックは、木版画の技法で刷られています。4つの版で構成され、それぞれの版ごとに世界観が構成されていることがわかります。人類は描かれておらず登場するのは昆虫たちです。
右端から順に、都市化の始まり、次が金融や経済など貨幣経済が導入された時期、そして消費社会、情報化社会、政治腐敗や戦争、環境破壊といった状況を経て、最後にこの世界の限りある資源を守り、人生で本当に必要なものは何かを問いかける、人類に共通するさまざまな課題が描かれています。また、各時代ごとに画面の下部ではさまざまな「教育」が行われていることが見て取れます。
作家は、マレーシアの都市化されていない地域を活動拠点としたアーティストグループで、搾取されないための奮起を地元の住民たちに促すために、アートを用いて自分たちの手でアクションを起こすDIYの精神で文化的な啓蒙活動を展開しています。
重要なことは、木版画という技法がレトロな技法なのではなく、彼らにとっては今日においても最も有効な技法のひとつであるということです。つまり、電気・通信・流通といったインフラが安定していない社会においても、手軽に素早く大量にいつでもどこでも情報が伝達できます。そうした合理的な理由から、今でも木版画という技法が存在感を持っているのです。
パンクロック・スゥラップ
- 2010年にサバ州ラナウ(マレーシア)にて結成
- サバ州コタキナバル(マレーシア)拠点
サバ州ラナウ(マレーシア)で結成されたアーティスト集団。名称は「パンクロック」と「農民の休憩小屋」を意味する語の組み合わせ。DIY精神を共有するアーティスト、音楽家、社会活動家など約10名のメンバーで構成されている。インドネシアのパンクバンド、マージナルを通じて知り合ったジョグジャカルタの木版画集団タリン・パディのレジスタンス活動に影響を受け、2012年以降は木版画を用いて地域コミュニティやボルネオ島の先住民族が直面する問題を描き、地域内外から注目を集める。ラジカルさとローカリティが同居する名が表すように、彼らの放つメッセージは、人々が持つ権利についての自覚を促し、貪欲からくる政治的退廃に声を上げ、複数の民族が結束するよう促している。
主な作品発表・受賞歴
2018 | コーチ=ムジリス・ビエンナーレ2018「Possibilities for a Non-alienated Life」コーチ(インド) |
2018 | 第9回アジア・パシフィック・トリエンナーレ、ブリスベン(オーストラリア) |
2018 | 個展「Lopung Is Dead! – Pangrok Sulap’s Inaugural Solo Exhibition」A+ WORKS of ART、クアラルンプール(マレーシア) |
2017 | 第6回アジアン・アート・ビエンナーレ「Negotiating the Future」台中(台湾) |
地図
愛知県美術館ギャラリー(8F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 8階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分