「FedEx」
「トラベル・ピクチャーズ」
- 《Travel Pictures [Tschaikowskistrasse 17 in multiple exposures* (LAXFRATHF/TXLCPHSEALAX) March 27–April 3, 2006] *Contax G-2, L-3 Communications eXaminer 3DX 6000, and InVision Technologies CTX 5000》 2006/2008
この部屋には、2つの作品が展示されています。部屋のあちこちに置かれている「FedEx」という立体作品では、ところどころ破損したガラスの箱が、世界的な運送会社FedEx社のダンボール箱の上に乗っています。よく見ると、ガラスの箱は、ダンボール箱にぴったり収まるように設計されていることがわかります。この空っぽのガラスの箱は、FedEx社の段ボールとサービスを用いて、世界中の美術館やギャラリーに送られ続けているのです。
壁に展示してあるのは「トラベル・ピクチャーズ」という平面作品です。これは旧東ベルリンにある廃虚となったイラク大使館を2006年に撮影した写真です。通常、感光防護用の袋に入れるべき写真フィルムを、保護しないまま空港の手荷物検査へ通すことでX線に曝し、そのまま展示しています。私たちはそれぞれの作品から、入れるべき物と容れ物、被写体とそれを写すべきフィルムとの関係について考えさせられます。これらの作品には、世界中を旅してきたという事実やその痕跡が示されています。また、その移動の過程で、「美術作品としてどのような意味や価値を持つようになったのか」という問いを提示している作品でもあります。
ワリード・ベシュティ
- 1976年ロンドン(英国)生まれ
- ロサンゼルス(米国)拠点
瞬時に行われているかに見える情報の伝達やモノの輸送が、実際には多くの人の肉体的労働を介して、各産業の制約のなかで行われているという事実をシンプルに提示する作品で知られる。《Travel Pictures》は、写真フィルムを空港の手荷物検査に通し、X線に感光させることで傷みや変色が生じたものをそのまま現像・プリントする。《FedEx》は、FedEx社規定出荷箱と同じサイズの薄いガラスの箱を世界中に発送し、輸送業者によって運搬される過程でひびだらけになったものを、ありのまま展示する。写真家として知られているが、その実践の範囲は広く、文章の執筆や展覧会のキュレーションも手がける。2018年にはフランスで「Picture Industry」展を企画し、800ページ超の大著となるカタログを編纂した。
主な作品発表・受賞歴
2015 | 第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ「All the World’s Futures」ヴェネツィア(イタリア) |
2014 | 個展「A Partial Disassembling of an Invention, Without a Future: Helter Skelter and Random Notes in Which the Pulleys and Cogwheels Are Lying Around at Random All Over the Workbench」バービカン・センター、ロンドン(英国) |
2013 | 個展「Fair Use」パワー・ステーション、ダラス(米国) |
2011 | 個展「Securities and Exchanges」ユーレンス現代美術センター、北京(中国) |
2011 | 個展「A Diagram of Forces」マルメ・クンストハル、マルメ(スウェーデン) |
地図
愛知県美術館ギャラリー(8F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 8階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分