「tsurugi」
「peak」
- 《tsurugi No.1》 2016
Photo: Kei Okano
Courtesy of KAYOKOYUKI
2点のシルクスクリーン作品とその制作過程の記録によって構成されています。シルクスクリーンとは、薄い布の一部にインクが透過できない乳剤を定着させることで、インクの透過するエリアを作って印刷する技法です。乳剤を直接布へ描くことで、印刷される図柄が決定します。
《peak 3601》は無数の小さなカラーチップが積み重ねられているようです。版を重ねるごとに乳剤のエリアを増やして、インクの通れる箇所を狭めていきながら 何度も刷ることで、インクが幾重にも重ねられて立体的な色彩の積層が形成されていきます。タイトルの数字は刷った回数を表し、その記録は《log, peak》として壁面に掛けられています。
《tsurugi》は、山岳の地図を下絵として、等高線に沿って何層もインクを重ねることで、立体的な山を形成した作品です。作家自身が登山した剣岳がモチーフとして選ばれ、小さな一歩を重ねるかのごとく、何度も版を重ねて完成へと一歩一歩近づいていった様子が想像できます。
厚みが出てしまう版を何千回も刷るための道具を自ら作ったり、作業環境の レイアウトなどに工夫を施すことで作業した様子が想像できるよう、工房の一部が 再現されています。作家は気の遠くなるような繰り返しの行程によって、平面作品を刷るためのシルクスクリーンという技法を応用し、立体作品を生み出す独自の技へと昇華させました。
今村洋平
- 1978年福岡県生まれ
- 神奈川県拠点
学生時代より一貫して、版画のシルクスクリーンという技法を用いて彫刻的な作品を制作。通常、シルクスクリーンで転写されるイメージは厚みを持たないと思われているが、繰り返し1万回近くも刷り重ねれば、インクの積層によって地形図のような造形が作られる。まるで3Dプリンターで作られる作品のようにも見え、作家はあたかもデータによって動かされる機械として活動しているかのようだ。だが今村の作品は構想段階で緻密に工程が決まっているわけではなく、様々なトラブルやエラーに都度対応しながら最終的に当初の構想を超えた形が生み出されている。今日、情報として流通する「画像」の物質的な側面に注目し、情報と手仕事との関係を、版画というアナログな複製技術を使いながら問いかける。
主な作品発表・受賞歴
2019 | 「点と線の宇宙」藤沢市アートスペース、神奈川 |
2016 | 個展「live printing」KAYOKOYUKI、東京 |
2014 | 「CSP2 -手法の触感-」桑沢デザイン研究所、東京 |
2008 | 「Draw print book」esplanade、シンガポール |
地図
愛知県美術館ギャラリー(8F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 8階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分