ラストワーズ/タイプトレース
- あいちトリエンナーレ2019の展示風景
《ラストワーズ/タイプトレース》2019
Photo: Ito Tetsuo
整然と並んだ24枚のモニターには、インターネットを通じて集まってきた10分遺言が次々と表示されています。中央のテーブルでは、無人のキーボードが 自動的に動作して文字入力が進んでいきます。
この作品は、2006年よりdividual.incが開発してきた「TypeTrace」と いうソフトウェアが元になっています。これはキーボード入力のタイミングや文字の削除などの執筆のプロセスを全て記録し、再生することができるソフトです。入力の際に次の言葉を入れるまでの時間に応じて文字のサイズが変化します。
書籍やディスプレイの上で一般的に目にする、統一されたサイズの活字とは異なり、ここでは書き手の逡巡や勢いが生々しく記録されています。文学館などで展示されている文筆家の生原稿や、編集作業中に入れられた校正記号などから、文章そのもの以上の情報が読み取れるのと同様に、この作品からはその背後にいる書き手の存在が意識させられます。
遺言を書くという経験は、大切な人への思い、また自分自身の来し方行く末を改めて整理することでもあります。今回の展示に際して、遺言を募集しているスペシャルサイトには、現在も多くの10分遺言が集まってきています。
dividual inc.
- 2008年東京都にて設立
- 東京都拠点
メディアアーティストの遠藤拓己と情報学研究者のドミニク・チェンによって設立されたベンチャー企業。のちにクリエイターの山本興一が加わる。「People will always need people(人がいる限り、人は人を求める)」をマントラ(会社の信念)に、テキスト原稿をタイピングする際の「筆跡」を可視化する「TypeTrace」や、日々の悩みや後悔を匿名で書き込むと誰かが慰めてくれるコミュニティサービス「リグレト」(2008-2017)、フォトメッセンジャーアプリの「Picsee」(2015)などを開発・運営。株主には家入一真など複数の著名エンジェル投資家のほか、MIT Media Labの伊藤穰一も名を連ねる。2018年1月にスマートニュース株式会社に参画するも、これまでdividual inc.として提供してきたサービスを継続して運営している。
主な作品発表・受賞歴
2012 | 「[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ」NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京 |
2008 | 第12回文化庁メディア芸術祭、東京、アート部門審査委員会推薦作品 |
2007 | 「文学の触覚」東京都写真美術館、東京 |
地図
愛知県美術館(10F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 10階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分