Decoy-walking
- あいちトリエンナーレ2019の展示風景
《Decoy-walking》2019
Photo: Ito Tetsuo
手前の空間で展示される「環世界とプログラムのための肖像」では、カラフルな平面作品と歪めた顔の写真が並べられています。単独で掛けられている上下 逆さまのカラフルな人物画は、特定のスマートフォンで「顔認識」されるものです。プラス/マイナスのマークにより、各イメージが顔認識の可否を示しています。
作家自身のパソコンに保存していたドローイングのいくつかが、コンピューターによって自動的に「人物」として分類されていたことをきっかけに、作品のアイデアが生まれました。 奥の空間に展示されている「Decoy-walking」は、新たに制作されたインスタレーションです。人間の歩き方の特徴をコンピューターによって認識する歩容認証という技術を応用した作品です。空間の入口に置かれる複数のモニターには、 会場で行われたパフォーマンスの記録や、歩容認証システムが歩行者のどんな 特徴を認識しているかのグラフなどが示されています。パフォーマンスではシステムを欺くためのパターンから逸脱する歩き方などが試みられています。 周囲に置かれている三角形のミラーや銀紙は、レーダーを増幅または拡散して、索敵を欺くための軍事技術で、これらは総称してデコイと呼ばれています。デコイの語源となったのは、カモの狩猟で用いられる模型であり、本作では機械や生物を欺瞞するカルチャーアイコンとして用いています。また、音のパターンを生む、 あるいは崩すドラムは軍楽隊から着想を受けています。これらはパフォーマンスで、カメラやシステムを撹乱するために使われました。これらを併置することで、パターンを使って世界を認知している技術やシステムを逆照射するように暗示しています。
一連のインスタレーションのテーマとなっているのは、パターンを認識するためのテクノロジーと、これらに対峙する人間の存在です。作家はテクノロジーの背景にある技術論文などを読解しつつ、テクノロジーによる世界の認知の境界線を探っているようにみえます。
村山悟郎
- 1983年東京都生まれ
- 東京都拠点
武蔵野美術大学と東京藝術大学で絵画を学ぶ。在学中に自己生成的な絵画制作の方法に関心を持ち、自ら設定したルールに従って、迷路や網目のような絵画を描き始める。生命システムの基礎理論であるオートポイエーシスや、計算モデルのセルオートマトンで形作られる生命的なパターンに関心が強く、カンヴァスなどの支持体が構造的に成長していくような特徴も見られる。また、ルールに沿って規則的かつ自律的に作られた作品でも、観客がそこに、顔などの幻影を見出してしまう認識のあり方にも着想を得て、カメラの顔認識機能を使った作品を展開している。
主な作品発表・受賞歴
2019 | 「21st DOMANI・明日展」国立新美術館、東京 |
2018 | 個展「Emergence of Order」大和日英基金ジャパンハウスギャラリー、ロンドン(英国) |
2015 | 個展「監獄のファンタジー」小金井アートスポットシャトー2F、東京 |
2010 | 個展「第4回shiseido art egg 村山悟郎展 絵画的主体の再魔術化」資生堂ギャラリー、東京 |
地図
愛知県美術館(10F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 10階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分