「2と3、もしくはそれ以外(わたしと彼女)」
- あいちトリエンナーレ2019の展示風景
「2と3、もしくはそれ以外(わたしと彼女)」2019
Photo: Ito Tetsuo
「2と3、もしくはそれ以外(わたしと彼女)」シリーズの画面の中にある黒い輪郭線は、写真の上から描かれたものではなく、撮影前に被写体の外周に直接ペンで描かれたものです。平滑に当てられている照明の効果と相まって、写真が一瞬、絵画のように見えます。タイトルの中では2人の人物の存在が示唆されています。輪郭線が描かれる風景やモチーフを通して、同じものを見る2人の視線が交錯する物語を想像させます。
「Laundry」シリーズでは、洗濯ばさみで吊るされているものが、平坦な色面で構成されています。目を凝らして見ても布の凹凸が見えてきません。 これらは実際には印刷した紙を留めて撮影しています。立体物の写真とおぼしき画面の中に、2次元空間が差し挟まれている様子に違和感を感じ、何度も目を凝らしてしまうかも知れません。
輪郭線は、対象物を周囲から明確に区切り、目立たせる効果を持ちます。
絵画ではゴッホ、セザンヌ、ルオー、雪舟などの作品の中にも多く用いられていますし、セル画を用いたアニメーションなどで見慣れている人も多いかも知れません。また、平面的な色面を3次元の被写体の一部として溶け込ませることは、写真編集ソフトなどで画像を合成したり配置したりする作業を、物理世界で再現しているようでもあります。いずれのシリーズも私たちの視覚的な認知に揺さぶりを与えます。
石場文子
- 1991年兵庫県生まれ
- 愛知県拠点
愛知県立芸術大学大学院油画・版画領域修了。ありふれた日用品にほんの少し手を加えて撮影することで、視覚的な違和感を生じさせる写真作品を制作。被写体の表面の一部に黒いペンで線を引いて撮影した近作では、写真の一部が厚みのない平板な空間であるかのように錯覚してしまう人間の認識の問題を追求している。彼女が被写体に加える操作がごく些細なものであるだけに、その写真を見る者はぎこちない違和感を感じ、空間が歪になった印象を持つ。仕掛けがわかればすぐにそれと理解される「トロンプ・ルイユ(騙し絵)」的な効果を与えながら、三次元の現実を二次元の虚構に写しとるという写真の本質的な特性を鋭く突いている。
主な作品発表・受賞歴
2019 | 「VOCA展2019」上野の森美術館、東京、奨励賞 |
2018 | 「Pop-up Dimension 次元が壊れて漂う物体」児玉画廊、東京 |
2018 | 「写真的曖昧」金沢アートグミ、石川 |
地図
愛知県美術館(10F)
所在地
愛知県名古屋市東区東桜1丁目13−2
愛知芸術文化センター 10階
開館時間
入館は閉館の30分前まで
休館日
バリアフリー
アクセス
・瀬戸線「栄町」駅下車 徒歩5分