【レポート】関口涼子の八丁味噌プロジェクト「キャラヴァン・メニュー味見会」が開催

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10月19日、名古屋市・伏見にあるアイリス愛知で関口涼子氏の企画イベント「キャラヴァンサライ・メニュー味見会(+レクチャー)―八丁味噌の旅」が開催された。

もともと「文学ケータリング」と題して、コンセプトや歴史に基づく料理を提供するワークショップを行っていた、作家兼翻訳家の関口氏。今回はあいちトリエンナーレへの出品ということで、他の参加作家の出身国の料理や調理法、さらには作品から得たインスピレーションなどと、岡崎発祥の八丁味噌をコラボさせた「キャラヴァンサライ・メニュー」を考案するという試みを実施。5月から始動したこのプロジェクトで、関口氏はパリの自宅へ7kgの八丁味噌を持ち帰り、インスタグラムを通じて毎日八丁味噌を使った料理やレシピを発信していた。そのインスタグラムで紹介されていたメニューを実際に体験できるのが、このイベントだ。

イベント当日は、34名の応募者が参加。インスタグラムで紹介されたものを中心に、14のメニューが登場。これらは全て、あいちトリエンナーレの参加作家や作品にちなんだメニューで、それぞれにちゃんとした意味をもっている。
例えば、プロデュースオペラ「魔笛」のイタリア人指揮者ガエタノ・デスピノーサ氏にちなんだドライトマトのピュレや、長者町会場に出品しているナターシャ・サドゥル・ハギギャン氏の作品の中にリンゴが沢山出てきていることから作られた、リンゴのコンポート八丁味噌。さらに、マスカット・キウイ・ハーブの緑づくしのサラダは、愛知県出身の作家・佐藤翠氏の名前から作られたそう。
他にも、台湾名物の鉄卵を八丁味噌アレンジにしたり、マレーシアやシンガポールで食べられているカヤジャムに八丁味噌の粉末をかけていただくものなど、世界各国のグルメも多く出された。

メイン兼メニュー
彩り鮮やかな料理がテーブルに並ぶ

港監督
関口氏と港芸術監督によるメニュー紹介

会場
参加者はメニュー説明&レクチャーに耳を傾けながら味見

デザート
締めのデザートももちろん、八丁味噌コラボ

この「キャラヴァンサライ・メニュー」のもう一つのプロジェクト、写真家フェリペ・リボン氏の写真についても紹介された。レシピや料理を公開しているインスタグラムのアカウントに、フェリペ氏が撮影した八丁味噌の写真が投稿されており、そちらの撮影秘話なども語られた。公開された写真はどれも八丁味噌とは思えない不思議なビジュアルで、時には宇宙に見えたり、時には黒い雲のように見えたりする。「キャラヴァンサライ・メニュー」で感じた八丁味噌の可能性にプラスして、フェリペ氏の写真から八丁味噌そのものの新しい姿を発見することができたプロジェクトになった。

フェリペ
(左)八丁味噌の写真を撮影したフェリペ・リボン氏

異なる文化の翻訳と解釈のあり方を、身近な「食文化」と結びつけた今回のプロジェクト。単純に見る・触るだけの美術鑑賞ではなくもっと幅を広げて、味覚で感じ考えるアートを見事に体現した。このあいちトリエンナーレの新しい試みで、アートというものの間口が美術ファン以外にも広がっていくだろう。

TEXT:海野窓佳

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