【レッツ探索!レトロビル会場を巡る】伏見~栄編

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あいちトリエンナーレ2016は美術館に公園、ショッピングセンターにお寺など、様々な場所が舞台になっています。今回は多彩な会場の中から、密かに盛り上がりをみせている「レトロビル」に注目してまわってみました。エリアは気軽に足を運べる伏見と栄をチョイス。伏見には作品が密集している長者町エリアがあります。オフィスビルが建ち並ぶ中、趣のある佇まいで来場者を迎えるレトロビルの魅力に触れてきました。

まずは長者町エリア会場となる堀田商事株式会社を目指します。伏見のメイン通りから一本道を入ると、古き良き商店街が姿を現します。そのまま会場へ直行しようと思っていたら、名古屋でお馴染みの激安お好み焼き店・大潮屋があるじゃないですか。 時計に目をやるとちょうどお昼の12時…ごくり……。腹が減ってはアートを楽しめない! ということで、お好み焼きと大判焼きを美味しくいただきました。

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「大潮屋」はお好み焼き220円、大判焼き80円、みたらし団子70円という驚異の安さ!

伏見駅から歩くこと約7分、セブンイレブンの向かい側に堀田商事株式会社がありました。歴史を感じさせる風貌とくすんだ色のタイルが渋い!壁やタイルに目を向けると、味わい深いレトロビルの魅力をより感じられます。この付近は繊維の問屋が多くあったことから「長者町繊維街」と呼ばれ、賑わいをみせていました。あいちトリエンナーレを楽しみながら、長者町エリアの街の魅力に触れるのもオススメです。

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くすんだ色のタイルが渋くてかっこいい。

建物の側面がどうなっているのか気になり見てみると、そこには長者町の街並みとそこで生きてきた人々が描かれた巨大な看板が。その大きさに驚きながらも、「二坪の小さな店からはじまった わが人生のスタートの店」と書かれた言葉をみてジーンときちゃいました。

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看板の横の長さは、なんと車四台分。

堀田商事株式会社の中に入ると、一階にはインドネシアのアーティスト・ルアンルパの「ルル学校」がお出迎え。教室の中には年代モノのラジオや雑誌などが置かれていたり、「アートより友人」と書かれた布が壁一面に貼られていました。教室の壁は、置いてあるペンやクレヨンで自由に落書きすることができるので、子どもと一緒にアートを楽しめる場所になっています。

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「ルル学校」では毎週土曜日の14時30分から、学校のメンバーや外部講師による公開授業を開催。

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筆者も落書きしてみました。童心に戻れて楽しいですよ。

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一体何を出すのか………。

3階に行くとアドリアナ・ミノリーティの作品がありました。映像が流れている3台のテレビと、大きな3つの絵が横たわっている空間は、どこか別の世界に来てしまったような錯覚に陥ります。目を凝らして絵を見てみると、繊細に描き込まれていることが分かりますよ。

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4階には大木裕之の映像作品があるので足を運ぶと、本やCDに領収書、ビニール袋やペットボトルなど、生活感たっぷりの物が溢れている部屋が出現。どこに映像があるのか探してみると、奥の方にある数台のテレビに映っていたり、壁をスクリーン代わりにしている映像もありました。置いてある物はすべて大木さんの私物だそうで、まるで彼の生活を覗いているような気分になります。

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様々な物で溢れた部屋は、まさに大木ワールド。

近くにいたスタッフに話を聞くと、置かれている物は会期中に増えているそう。東京と高知を拠点に活動している大木さんは、移動の合間にこの部屋で泊まる事もあるというからビックリ。畳の上に丁寧に畳んであった布団と枕は、大木さんが寝るためにあったのです。これから一体どんな物が増えていくのか、会期中にも変化し続けている大木作品でした。

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布団と枕の横に置かれているお酒の空き缶。大木さんは、かなりの呑ん兵衛?

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溢れかえる物の中に、なんと公式ガイドブックを発見!嬉しい!

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まさか、この部屋で散髪も!?

次に向かったのは同じ長者町エリアにある伝馬町ビル。堀田商事株式会社から徒歩5分ほどで到着です。この堂々とした佇まいもさることながら、エメラルドグリーンのタイルが美しい。均等の大きさで並んでいる窓も粋です。

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中には*キャンディ・ファクトリー・プロジェクトの映像作品がビルをまるごと使って展示。ビルのそばに行くとポップな音楽が鳴っていたのですが、それも作品の一貫だったようです。海外の何気ない街並みや食べ物が映し出されたり、抽象的なメッセージが投影されたりと独自の世界観を堪能できます。 

ここで休憩がてら、レトロ喫茶として有名な喫茶クラウンへ。創業60年以上の喫茶店だけに、外観も昭和の懐かしい雰囲気があります。店内に入ると暗めの照明にレトロな雰囲気のソファが並んでおり、喫茶クラウンならではの空間を体験できます。お店の方に話を聞くと、コーヒーのカップは創業当時から使っている物もあるそうです。

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実はここにもあいちトリエンナーレの作品があるってご存知でしたか?愛知県在住の今村文さんの切り紙の花が、壁の至る所に貼られています。もともと飾られていたのかと思うほどレトロな雰囲気と合っていて、美味しいコーヒーを飲みながら眺めていると心が落ち着きますよ。

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店内の色々なところに切り紙の花が飾られているので探してみよう。

最終目的地は長者町エリアを離れ、栄にある旧明治屋栄ビル。喫茶クラウンから栄駅方面に歩いて約10分ほどで到着。2014年まで老舗高級スーパーの明治屋が営業していたビルなので、端正な外観は存在感抜群です。また約80年の築年数は伊達ではなく威厳すら感じます。ビルの裏側を覗いてみると、表の顔とはうって変わり配管やダクトが剥きだしになっている廃墟感がたまりません。

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旧明治屋栄ビルの表側。

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旧明治屋栄ビルの裏側。

外の窓から少し覗くこともできる一階には、ケルスティン・ブレチュの作品がありました。多彩な色を使ったマーブル模様の絵は、ダイナミックなタッチに引き込まれます。全部で5枚ほどの絵が飾られているので、違いを見比べてみるのも楽しいです。また今回は絵だけではなく、日本で撮影された映像作品も上映されています。実はこの映像を写しているスクリーンには仕掛けがあるので、ぜひ会場に行って近くで見てみてください。よ~く見ると、日本でも人気のあのキャラクターが描かれているんです。

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中央の映像を映しているスクリーンには………?答えは会場で!

次は端聡さんの作品をみるために、一度外へ出て二階の会場へ移動します。部屋の中に入るとビックリ仰天。薄暗い部屋には、まるで映画のセットと言われても遜色ない実験室のような空間が広がっています。いくつもある容器に上から水滴が落ちると、もくもくと蒸気が発生しているよう。部屋の壁面が剥がれたレトロビルの空間と、作品のもつ怪しげな雰囲気がマッチした作品でした。旧明治屋栄ビルには、他にもバレエ教室を会場にした寺田就子さんの作品や2つの映像作品もあるので、そちらもぜひチェックを。

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今回は栄、伏見にあるレトロビル会場に注目してみました。街の変化と共に取り壊されてしまうことも少なくないですが、こうして活用されることでレトロビルの魅力に触れるきっかけになると感じました。最後にレトロビル会場へ行った時のワンポイントアドバイスを。あいちトリエンナーレの作品だけではなく、通路や階段などの何気ない場所にも目を向けてみてください。剥がれた壁面がそのままになっている館内は、歳月によってできたアートともいえます。そんな楽しみ方もできるので、ぜひレトロビル会場巡りをしてみてください。

TEXT:菊池嘉人

  
 
  

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