「アート」の中の「音」とは?「アートに音を視る」レポート

oto-2

【レクチャーレポート】
「アートに音を視る」8月28日(日) 14:00-16:00
スピーカー:小沼純一(早稲田大学学術院教授)×港千尋(あいちトリエンナーレ2016芸術監督)

愛知県美術館8階のプラットフォームにて、早稲田大学の小沼純一教授を迎えて、「アートに音を視る」と題したレクチャーが開催されました。芸術監督の港さんが、小沼教授の著書『音楽に自然を聴く』を読んだ後、熱いラブコールを送ったことで今回の対談が実現したそうです。

oto-7

芸術というと、一般的には絵画や映像を思い浮かべますが、あいちトリエンナーレ2016では、世界各国の自然の音を録音したクリス・ワトソンの作品、様々な言語で発生する声によって空間に色を立ち上げさせるというキオ・グリフィスの作品、現代音楽家である小杉武久のパフォーミングアーツなど、“音”を題材にした作品も多く、今回のレクチャーが開催されることとなりました。

2人の挨拶があった後、まず、中国を代表する作曲家で、現在はニューヨークで活動しているタン・ドゥン「紙の協奏曲」の映像が流れます。紙を巧みに扱い、様々な音を奏でる女性とオーケストラの共演です。紙に唇をあてて出す高音や、紙をゆっくりと破く音、そして、オーケストラの団員たちは楽譜を高速でパタパタと動かして音を出していきます。3分ほどの映像を観た後、小沼教授の解説が始まります。何の音だと思いますか?という問いかけに、私自身は嵐や風などの音に聞こえたのですが、正解は鳥。今回のトリエンナーレは鳥がモチーフになっている作品が多いこと、そしてトリエンナーレの“トリ”にかけて、まずは鳥をイメージさせる音楽を選ばれたそうです。ほかにも鳥の声を連想させる音が入っている雅楽や、ピアノやバイオリンなどで鳥の鳴き声を表現したオリヴィエ・メシアン「鳥たちの目覚め」など、自然を感じさせる様々な音楽が会場に響きました。

oto-2

小沼教授の解説は、自身が感じたイメージを具体的に話しながら説明してくれるため、とてもわかりやすく、聴いたことのない音楽が心地よく耳に入ってきます。港監督も、興味深くじっくり耳を傾けていました。無意識で聞こえる音ではなく意識的に音を聴くこと、世界各国で音の聴こえ方や表現方法が異なることなど、音にまつわる興味深い話が盛りだくさん。

港監督からは冒頭で紹介されたキオ・グリフィスの作品に対しての説明も。真っ暗な空間に様々な言語がスピーカーから流れ、見た人が色を浮かび上がらせるという内容の作品で、例えば、青ガエルと聞けば青色が浮かび、夕陽と聞けば赤色が浮かぶというもの。音について見識を深めた後、鑑賞してみると感じ方が違うのではとおすすめしていました。

oto-0

対談は音について感じている疑問、好きな音についてなど。レクチャー終盤には観客からの質問タイムが設けられました。耳に意識を向けた2時間。考えて見るのではなく感じて見ることが重要だと感じるきっかけとなりました。アートを鑑賞することは何もむずかしいことではなく、ただ五感を研ぎ澄ませて感じるだけでいいのかもしれません。

会期中は、各会場で多彩なレクチャーやアーティストトークなどが開催されています。無料で参加できるものも多くあるので、少しでも興味があるものがあれば訪れてみてはいかがでしょうか。

TEXT:小玉みさき (エディマート)

 

サイドナビ