アマゾンから62時間かけて持って来た!?謎の物体<Nave(ナーヴェ)>の正体とは

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豊橋駅前大通会場にて展示を行っているブラジル人アーティスト、リビジウンガ・カルドーゾは、これまでに「第12回ハバナ・ビエンナーレ(2015年)」、「クンステン・フェスティバル・デザール(2015年)」、「第30回サンパウロ・ビエンナーレ(2012年)」といった国際展で作品を発表してきた人物だ。

今回はその制作現場に潜入した際の様子をご紹介する。

「アマゾンから62時間かけて持ってきた。」と誇らしげに指差す先には、宇宙船のようにも見える謎の物体。彼はそれを「Nave(ナーヴェ)」と呼び、「ブラジルでは音楽イベントやフェスなどにおいて、DJブース的に使用されるポピュラーなモノなんだ。」と説明をし始めた。

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Naveの全景。人が一度に数人乗れる大きさで、テーマパークなどにおいてありそうなポップなデザインだ。

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社会科学と美術を学んだ後、学術と芸術表現との間にある曖昧な領域でその活動を続けているというカルドーゾは、〈インスタレーション的な展示〉、〈ワークショップ〉、〈パフォーマンス〉などを行ってきた。今回の展示も前述した3つのキーワードに該当する仕掛けがあるようだ。

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「伝統的な楽器を用いて、この上でパーティーをするんだ。」と謎の物体《Nave》の〈遊び方〉について、補足を加え「国籍や言語の違いを越えて、文化や音楽などを共有できればいいな。」と続けた。遊ぶためのツールとして、この船を操る操縦席のような、コントローラーのような不思議な機器も。

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実はこちらは音響機器。彼がフィールドレコーディングした音源がランダムに再生され、さらにマイクから音を加え、幾重にもエコーしていくような複数のエフェクトがかかる仕掛けがなされている。展示を見る、というよりもここで遊んだり、体験したりしてほしい、という彼の思いが込められている。彼が「操縦席のようなもの」と表現する音響装置は、名古屋で改造エフェクターの制作活動を続ける日本人アーティストのサポートによって制作されたもの。しかも、たまたま名古屋のレコードショップにカルドーゾが出掛けた際に、知り得た人物なのだそうだ……。

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エフェクト装置の試奏をするカルドーゾ。

どこからどこまでがパフォーマンスなのか?がわからない彼の言葉とともに、作品のアティテュードも単なるインスタレーションや展示物とは違った新しい概念にあることが見えてくる。

最後に彼はこう付け加えた。「太古の昔、人は物々交換をしてきた。この《Nave》も何かしらのモノと交換が可能。日本中を物々交換されながら、《Nave》が〈旅〉をしていくこと。それも作品の一部となる。」と。「あいちトリエンナーレ2016」のテーマである〈旅〉を彼なりに表現した作品なのかもしれない。あなたがこの謎の物体《Nave》で実際に遊んでみて、少しでも愛おしく思えてきたら、それはきっと彼が望んでいた旅の始まりなのだろう。

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そして、完成した展示作品はこちら。
アマゾンの音の船ナーヴェと、愛知の土でできた陶製猿人アウストラロピテクスが出会う瞬間を矢作川の砂でつなぎ、空間全体は音響装置でコントロールされたサウンドによって体感型展示体験へと誘う展示となった。

完成作品
《日蝕現象 Achado arqueológico, achado não é roubado》

TEXT&PHOTO:武部敬俊(LIVERARY)

 

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