最新作『コンタクト』についてを語るフィリップ・ドゥクフレ インタビュー

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パリを拠点に活動する振付家であり演出家のフィリップ・ドゥクフレ。彼が率いるダンス・カンパニーDCAが、あいちトリエンナーレに登場する。カンパニーDCAは、サーカスのようなアクロバット、映像を使ったトリック、ユニークなダンスなど、ミュージカルともダンス公演ともいえない、彼ら独自に舞台を作り上げる。
「あいちトリエンナーレ2016」では、そんな彼らの最新作「CONTACT」を上演する。はたしてどんな舞台が繰り広げられるのか。ドゥクフレのインタビューより、そのヒントを探してみよう。

「ミュージカルすべてのミックスであり、ハイブリットの創作」
フィリップ・ドゥクフレが最新作「CONTACT」を語る

――ご自身とカンパニーDCAについて自己紹介をお願いします。
私は 1983年のショー『ヴァーグ・カフェ』を創作した時、ダンス・カンパニーDCAを設立しました。そして1986年に『コーデックス』が成功し、そのトリトン公演が実現。それを皮切りに『プティ・ピエス・モンテ』『デコーデックス』『シャザム!』『アイリス』『トリコーデックス』『ソロ』『ソンブレロ』『キュエル・クラゼー』『オクトパス』『パノラマ』『コンタクト』『ヴィボ』といった作品を発表してきました。一方で1992年にはアルヴェールビル冬季オリンピック開会式と閉会式、1997年には第50回カンヌ映画祭の開会式も演出。30年にわたるキャリアを重ねてきました。また、舞台作品だけでなく、いつも私はイメージというものに惹かれ続けているんですよ。そんな理由から、ビデオクリップやショートムービーを作ったり、視覚的インスタレーションの仕事もしています。

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『CONTACT』2014 photo: Laurent Philippe

――『コンタクト』には、ドゥクフレさんにとって新境地のエンタテイメント性があるそうですね。構想の発端はどのようなものだったのでしょう?
私はずっと、メンバーやアーティスト、カンパニーDCAの技術者とミュージカルの創作を夢見ていました。ミュージカルで際立っているのは、基本的に映画ですよね。フレッド・アステア、ジーン・ケリー、シド・チャリシー、レニコラス・ブラザーズといったスターの存在が印象的です。他にもブライアン・デ・パルマによる 『ファントム・オブ・パラダイス』にも圧倒されました。『コンタクト』は、こういったミュージカルすべてのミックスであり、ハイブリッドの創作です。ミュージカルというジャンルに対する、私なりの敬意の表し方ですね。

――『コンタクト』を通じて、どのようなことを表現したいと考えていましたか。
『コンタクト』は、私たちがわかっていることや創作プロセス、あるいは、ツアーで私たちに起こったことや誰かに何年も前に起こったこと、他の人に最近起こったこと、つまり“経験”について語っている作品です。『コンタクト』は、まさに経験のコンビネーションがテーマ。しかし現実には、それをオープンにする(=目に見えるものにする)ことは簡単ではありません。私たちには、それを歪曲し、変換し、距離を保つ必要がありました。そこが特に力を入れたところです。遠くからの視点を持ったり、時にはクローズアップしたり……。この冒険の数々は、そもそもジャンルを探求し、思考していることの代替方法を見つけようとする欲求から生み出されたんです、結果、それはミュージカルという形になって実を結びました。

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『CONTACT』2014 photo: Laurent Philippe

――『コンタクト』制作中、具体的にどんな苦労がありましたか。
実現するのに骨の折れる、非常にトリッキーなショーなんですよ。ありとあらゆるものを取り入れ、すべての感覚を使っているので、舞台作品に達成するまでは大変でした。そこには大規模なセット、多くの衣装、たくさんの人々、ライブ音楽、リアルタイムのビデオ演出効果などが織り込まれているんですよ。

――2014年の初演は、実際どんな手応えでしたか。
観客から熱狂的な支持を受けました。

――『コンタクト』という題名には、どんな想いがこめられていますか。
とにかく最初は、1978年の作品『コンタクトホーフ』(※)に敬意を示したいと思っていたんです。私は、ピナ・バウシュを生涯ずっと崇拝していますので。実際『コンタクト』の人選では、潜在的に、ピナ・バウシュのようなダンスグループを意識していました。大柄な人、美しい人、年をとった人……、出演者は25~62歳までのリアルな人間で構成しています。ちなみに、この創作に影響を与えたけれど、結果的にショーには使われなかったセルジュ・ゲンスブールの曲名が『コンタクト』でもあるんですよ。

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『CONTACT』2014 photo: Laurent Philippe

――日本公演に向けて、改訂される点があれば教えてください。
ほとんど変更はありません。『コンタクト』は、本質的に、ほとんど国にこだわりません。このショーは戯曲『ファウスト』の神話に基づいたものではあるんですが、特別に現地に適応させる工夫を必要としません。一部に字幕を使ったり、アーティストが日本語訳を覚えるところが時々あるぐらいですね。

――これまでも来日公演を行っていますが、日本の観客の印象はいかがですか。
日本の観客は本当に素晴らしいです。

――日本のアートシーンを、どのようにご覧になっていますか。
あまりよく知らないのですが、歌舞伎は大好きですよ。

――あいちトリエンナーレ2016参加に向け、抱負や期待などあればお聞かせください。
日本には何回か来ていますが、私は日本が大好きです。日本人の忠誠心、連帯感、寛容さが本当に好きですが、何よりも、まず食べ物が美味しい。カンパニーと共にここへ戻ってこられて大変うれしいです。このような重要かつ有名な祭典でDCAの作品を披露できることは重要だと捉えています。ショー『コンタクト』を日本の観客と共有できることは、とても誇りに思っています。

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『CONTACT』2014 photo: Laurent Philippe

※「タンツテアター(=ダンスシアター)」を標榜した振付家・演出家ピナ・バウシュが、彼女の率いるヴッパタール舞踊団で発表した代表作。原題は『KONTAKTHOF』。

「CONTACT」【日本初演】
10月15日(土)19:30・16日(日)16:00
愛知県芸術劇場 大ホール
※料金など詳細はコチラ

INTERVIEW:小島祐未子

 

 

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