【公式ガイドスタッフによる裏ガイド 】 ②作品・会場ガイドは何を見ればイイ?

IMG_2528

●左から公式コンセプトブック、公式ガイドブック、キャラヴァンガイドブック、ポケットマップ

第2回目は、作品や会場を解説しているガイド類がテーマ。公式ガイドブックを作った身としては、「これ一冊でオールOKです」と言い切りたいところだが、会場での無料配布物含め、ガイドの役割がそれぞれ微妙に異なっている。その役割を中心に説明していきたい。

IMG_2534   
ガイドの基本になるのはキャラヴァンガイドブックとポケットマップ。どちらも会場で無料配布されている。

作品、会場を案内するガイドのベースとなるのは、2つの無料配布物、キャラヴァンガイドブックとポケットマップだ。キャラヴァンガイドブックは出展アーティストのプロフィール、作品によってはコンセプトまでが解説されている。イベントスケジュールも記載されているので、イベントの全容を知るにはこれ一冊で事足りるだろう。ポケットマップはその名の通り、作品の所在地が記されている。トリエンナーレは名古屋、岡崎、豊橋と、移動時間が必要な3会場で開催されているが、3区間の簡単なアクセスも記載されている。基本的にはポケットマップで展示場所を確認、キャラヴァンガイドブックで作品の詳細を確認、という流れになる。ちなみに施設内の詳細展示場所はキャラヴァンガイドブックに記載されている。ポケットマップを使い会場まで足を運び、展示場所に着いてからの詳細確認はキャラヴァンガイドブック、というのが一般的な使い方だ。あいちトリエンナーレを巡る際の最低限の情報は、この2つで知ることができる。

IMG_2536
施設内の詳細図はキャラヴァンガイドブックに掲載されている。

『あいちトリエンナーレ2016公式ガイドブック』(1300円・ぴあ)は“まちの魅力”も芸術祭の楽しみのひとつ、というコンセプトで作られている。作品紹介だけでなく、街ガイドやグルメスポットも掲載されているのが特徴だ。美術館での展覧会と違い、芸術祭は街が舞台。アート作品と同時に街の名所、土地のグルメも含めて、「あいちトリエンナーレ」を楽しみ尽くせる内容になっている。作品鑑賞はもちろんだが、その前後にある時間の過ごし方も芸術祭の大きな醍醐味だ。各企画のイメージフォトでは、星野源やcero、キセル等の写真でも知られる三浦知也氏に、独自の視点で街の風景を切り取ってもらった。名古屋、岡崎、豊橋、3都市の個性を、わずかながらでも感じてもらえると思う。その他、エリア内の歩行距離、おすすめモデルコース、休館日一覧、チケット情報の詳細など、無料ガイドでフォローしきれていない情報で公式ガイドブックは構成されている。

IMG_2545
イメージフォトを撮影したのは三浦知也氏。撮影スポットを探せば、また違った街の魅力が見えるはずだ。

最後に公式コンセプトブック『夢みる人のクロスロード』(1500円・平凡社)について。これまで紹介してきたガイドがリアルな場所を巡る際の指標だとするなら、こちらは内面、精神面を巡る際の指標と言える。これまで紹介してきたガイドは、意図的と思われるが、作品解説を過多にしていない。このコンセプトブックでは、その背景にある環境、思想などが作家やキュレーターらによって語られている。「あいちトリエンナーレ」にそれなりに足を運んでいる人であれば、作品で喚起された知的好奇心がさらに刺激されることだろう。“旅”という、叙情性もあわせ持つテーマの芸術祭には、必要な一冊という印象だ。

IMG_2558
コンセプトブックは全3章で構成されている。

以上、駆け足ながらガイド類を解説させてもらった。前述したように、作品を巡るだけであれば無料のキャラヴァンガイドブックとポケットマップで支障はない。だが、アート作品に触れた時の歓びのひとつに、知的好奇心の広がりがあることを考えると、個人的には公式ガイドブック、コンセプトブックもぜひ手にとってほしいところだ。

TEXT:阿部慎一郎

 

サイドナビ