誰もが見られて共有できるアート森北伸「ライムライト」「モダン・タイムス」

JPタワー名古屋2階貫通通路 森北伸 「モダン・タイムス」

都市の玄関口である駅付近でアート作品を楽しめることは、「旅」が大きなテーマとなる今回のトリエンナーレにとって重要だろう。岡崎市、豊橋市とも駅付近の展示は充実していて、改札から一歩足を踏み出すと街の盛り上がりが感じられる。

今まで栄、伏見、錦(長者町)を中心に行われてきた名古屋市も、今回から名駅地区にアート作品を常設展示している。名古屋駅に隣接する「JPタワー名古屋」の2階貫通通路に行けば、
森北伸さんの作品「モダン・タイムス」を楽しむことができる。

森北伸さんは名古屋市出身。現在は愛知立芸術大学で教えながら、岐阜県多治見市を拠点に創作活動を行っている。展示する場所と空間を深く読み込んで、シンプルで丁寧な絵画、彫刻作品を制作するアーティストだ。今回のトリエンナーレにはJPタワー名古屋と共に、「愛知芸術文化センター」地下2階にも作品「ライムライト」を出展している。

愛知芸術文化センター地下2階 森北伸 「ライムライト」
愛知芸術文化センター地下2階 「ライムライト」

こちらの「ライムライト」も、地下鉄で訪れた来場者が最初に目にする場所に展示されている。この2カ所への出展はトリエンナーレ事務局からの要望だという。

森北さんは「制作をするということはある意味、自分の中を旅していくような行為なので、トリエンナーレのテーマはすごく僕にフィットした。事務局からは『来場者をお出迎えするような作品』というリクエストをいただいたが、あまり気兼ねせずにその空間で自分の作品がどう展開していくかを考えて制作した。普段から制作で心掛けていることは、太古の昔や未来に行った時にその作品は見る人に響くのかどうか。自分の心の中に深く入っていくような創作をしている」と話す。

どちらの作品もタイトルはチャップリンの映画から付けたという。「モダン・タイムスは直訳すると『現代』で、ライムライトが直訳すると『照明』。チャップリンの映画は少し皮肉めいていますが、作品には家のあかり、舞台装置の街灯など、いろいろな意味を込めている。見る人の視点を考えながら作っていて、灯りも土や金属も温かみが感じられるよう、こだわって選んでいる。正面から、上から、いろいろな方向から見てほしい。名駅の方はステンドグラスで、光と色に満ちた作品。制作している時も思ったが、どちらの作品も通りがかった誰もが見られて共有できる場所にある。興味を持っていただいた人が、トリエンナーレに入っていけるような作品になってくれたら、うれしい」と作品に込めた思いを語った。

トリエンナーレの全ての作品には、国内外のアーティストたちがテーマを深く考え、自らの創作姿勢を示した成果がはっきりと、あるいは繊細に散りばめられている。幸い、「あいちトリエンナーレ2016」の会期は10月23日までと長い。気になる展示があれば、何度も作品の前に立ってみるのも良いかもしれない。

森北伸さん 愛知芸術文化センター地下2階で
森北伸さん

TEXT:竹本真哉

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