ダニ・リマが主宰舞台で見せる日常的で非日常的な新しい世界

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現在、オリンピックが開催中の都市、ブラジル・リオデジャネイロ。リオのカーニバルでも有名なこの街で活躍しているのは、サンバダンサーだけではないようだ。コンテポラリーダンサー/振付家のダニ・リマが主宰する舞台『Little collection of everything』(放課後のちいさな宝箱)が、8月11日~18日の1週間にわたって、愛知県芸術劇場/穂の国とよはし芸術劇場の2会場にて開催されている。

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同作品は、「あいちトリエンナーレ2016・パフォーミングアーツ部門」の〈オープニング作品〉として上演されるのにふさわしい内容と言えるだろう。まず、そもそも子ども向けに創作された作品であるため、非常にわかりやすい内容であること。そして、4人の個性的なダンサーの衣裳を含め、舞台上に観客が認識できるオブジェクト、それぞれが視覚的に異常にビビッドでポップなカラーリングで構成されていること。ダンサーたちのダイナミックなアクションに、気づけば夢中になっている自分に気づく。コンテポラリーダンスが持つ「わかりにくくて、少し暗い」というネガティブな固定観念をすっ飛ばした同作品は、子供~大人まで(特にアート初心者はより)純粋に視覚的に楽しめる作品として受け取ることができるはず。

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今作のモチーフに関して、ダニ・リマは「すでに知識や経験が豊富な大人では思いもよらない子供たちの持つ想像力の豊かさや、その拡大していく状態を表現した。」と語る。その言葉通り、4人のダンサーから発せられる拙い日本語(劇中の台詞は日本語8割:ポルトガル語2割となっている)や、大げさなジェスチャーなどは明らかに子供っぽさを演出するひとつの装置となっている。舞台で使用されるオブジェクトはすべて日用品であるが、それらにアイデアを注ぎこみながら玩具として遊び続ける子供たち(を演じきるダンサーたち)。彼らの遊びへの追求心からポップアップされて見えてくるのは、動作(動詞)や日用品(名詞)を拓みに言語変換していく豊潤なイマジネーションと、それにハッとさせられる瞬間の喜びにも似た不思議な感情だ。

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「パフォーミング・アートとは何か?」。その問いに対し、ダニ・リマ本人は「それはすごく難しい質問だ。」と前置きをしてから「そもそも私は〈舞台上のダンサー〉対〈観客〉という構造さえあれば、すべてそれはパフォーミングアートだと思っている。」と語り始めた。来日した彼女に対し、礼儀正しい日本人スタッフたちが声を揃え、一礼ともに挨拶をしてくれたという出来事も、彼女にとってはそれは非常に演劇的でパフォーミングアートと呼べる体験だったと笑う。

そんな彼女だからこそ生み出せたのかもしれない今作品を鑑賞後は、当たり前だった日常の風景や事象が全く違った見え方であなたの前に現れ、世界が踊り始めるかもしれない。ダニ・リマが見せる、新世界をぜひ体感してみてほしい。

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TEXT:武部敬俊(LIVERARY)
PHOTO:LIVERARY

 

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