愛知県出身の作家佐藤翠さんの展示会場へ

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8月11日(木・祝)の開幕まで、カウントダウンが始まったあいちトリエンナーレ。各地の会場では、参加作家の作品制作、設置搬入が続々とスタートしている。
繊維問屋が建ち並ぶ長者町の、八木兵錦6号館にて展示する作家、佐藤翠さんは、地元愛知県出身の作家だ。もともと洋服が好きで、アパレルショップでアルバイトもしていたという彼女は、クローゼットに収められた服飾品をモチーフに作品を描いている。女性のファッションへの憧れが素直に、楽しそうに表現されていて、鮮やかできらびやかで幻想的な作品に心躍る。

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今回の会場では、濃紺色の別珍クロスが壁一面に貼られており、一歩足を踏み入れると、ハイクラスの邸宅にお邪魔してしまったかのような印象だ。今回の展示のために描きおろされたという新作はどれも大きく、作品の前に立つと、まるで描かれたクローゼットの中に自分が入ってしまったかのような錯覚を覚える。また数点の作品は、鏡を支持体として描かれているため、鑑賞者が否応なく移り込み、鑑賞者が着ている服も作品の一部となる。作家の記憶と、鑑賞者の記憶がまじり合い、一瞬一瞬異なった表情を見せてくれるのも面白い。

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姿見に描かれた抽象的な植物画の作品は彼女の新しい試みだ。洋服の魅力について探究した際に、花や植物が服飾装飾のモチーフとして多々用いられていることに気づき、これまで自分が惹かれてきたものの核が、実は自然の中にあったんだと納得し、植物がもつ自然の美しさに心惹かれるようになったという。具象と抽象の間をふわふわと行き来することで、鑑賞者の感じ方にも幅がうまれ、心地よい空間となっていた。

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隣の別室では、靴やジュエリー、香水、花などをキャンバスに描いた作品がショップのディスプレイのように展示されていて、こちらはさながら高級ブティックのようだ。繊維の卸問屋街というこの場所で、共通性をもったこのような展示が立ち上がるのも見どころのひとつだ。
彼女の作品は長者町のほかにも、岡崎の六供会場でも展示される。さらにジェイアール名古屋タカシマヤでは、靴や衣装をモチーフにした作品を、同店で取り扱う靴とコラボレーションした展示として展開する。それぞれの会場で洗練された魅力を放つ彼女の作品を、是非体感してみては。

text&photo :黒田義隆(LIVERARY|ON READING)

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