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名古屋文化のシンボル、喫茶店の空間で和む
「名古屋に来て最も訪れたい場所」のひとつとして多くの人が挙げるのが喫茶店。
無料でついてくるモーニングサービスやおつまみなど、この地域独特のサービスを持つ名古屋の喫茶店。
今や業態そのものが名古屋メシのひとつとも言えます。
数ある喫茶店の中 から今回訪れるのは、昭和29年創業の「エーデルワイス」、そして昭和35年創業の「ボンボン桜山店」。
両者に共通するのは 中2階を設けたロフト式設計。
喫茶店全盛期の当時、なぜこのスタイルが流行したのか?マスターが語る開業秘話とは・・・?
モーニング、そしておつまみをつまみながらコーヒーとおしゃべり、そして空間の和み感を楽しみます。

naikan
珈琲エーデルワイス/ボンボン桜山店

Coffee Edelweiss / BONBON

8.24.sat 9:00-11:30
  • 定 員=20名
  • ガイド=秋田拓(珈琲エーデルワイス店主)
        楯武司古(ボンボン桜山店店主)
        大竹敏之(フリーラーター)
  • 住 所=喫茶エーデルワイス
        名古屋市東区東桜1-10-1
        ボンボン桜山店
        名古屋市昭和区桜山町4-70
    ※当日、移動に伴う交通費および喫茶店内での飲食代が必要となります。
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今回訪れたのは「珈琲エーデルワイス」と「ボンボン桜山店」。どちらも創業50年以上という歴史を誇る老舗喫茶店です。名古屋独特の喫茶店文化と、古きよき店舗設計の面白さを、この2軒をはしごしながら体験しようというのが今回のテーマです。

「エーデルワイス」ではモーニングサービス、「ボンボン」ではおつまみと、名古屋喫茶ならではのお得なおもてなしサービスも合わせて楽しみます。
最初に訪れたのは「エーデルワイス」。朝9時開催という早いスタートにはワケがあり、ここでモーニングをいただくためです。コーヒー代だけでトーストなどがおまけとしてついてくるモーニングは名古屋の喫茶店ならではのサービス。ここでもトースト1/2とゆで卵がついてきます。みんなで朝食をとりながら、空間とマスターのお話を楽しもうというわけです。
案内役は2代目マスターの秋田拓さん、そして『名古屋の喫茶店』の著者であるフリーライターの大竹敏之さんです。

「エーデルワイス」はすぐ近くに建つ名古屋テレビ塔と同じ誕生日。昭和29年に6月19日にオープンしました。当初はテレビ塔にあやかって「喫茶テレビ」という店名だったそうです。現在の形に改装したのは昭和34年。改装にともない店名も変更しました。山登りが好きで、山の仲間が集える場にしたいという初代マスターの思いから、高山植物の名前を店名にしたそうです。

外観はごく普通の喫茶店に見えるのですが、店内に1歩入るとアートや民芸品が目に入り、個性的でインパクトがあります。こちらも初代マスターの趣味とのこと。「空間を楽しんでもらいたい」という想いから、様々な彫刻や民芸品を店内に飾って、いつしか独特な雰囲気の内装になりました。中でも印象的なのは中2階です。天井一面が、草花や山の自然が描かれた36枚もの油絵と日本画に埋め尽くされ、圧巻です。描いたのは日本画が日下直樹さん、洋画が鈴木温雅さん、いずれも先代マスターと親交のあった地元の画家だそうです。

この中2階を囲む壁材は白樺。今では茶色く変色していて、マスターから教えてもらわなければ気づきませんでした。
そして、実はこの中2階の下には半地下もあります。かつてはお客さん用のフロアとして使われていたそうなのですが、現在は倉庫として使われ入ることはできません。しかし、この日は特別に中の様子を見せてもらうことに!

これぞオープンアーキテクチャーの醍醐味です。中は天井が低く穴倉のよう。壁にはやはり彫刻が掛けられていました。
かつての喫茶店は現在のように誰もが気軽に入れる健全な場所というよりも、ちょっと不良の香りがする場所だったり、大人限定の社交の場だったりしたそうです。中2階や半地下を設ける作りは、そんなかつての喫茶店のポジションを象徴するものとも言えそうです。
「実は店内に飾ってある絵や彫刻はごく一部なんです」とマスター・秋田さん。そこで特別に2階の倉庫に収蔵してある初代マスターの集めた作品も見せていただきました!

それでは、地下鉄で移動をして2店目のボンボン桜山店へ!
ボンボン桜山店のガイドはマスターの楯武司古さん、そして引き続き大竹さんです。

ここもエーデルワイス同様に中2階と半地下があります。この日はみんなで中2階に着席しましたが、地下のフロアは静かで隠れ家のような雰囲気のためゆったりと寛げそうです。壁のライトのランプシェードは4つともすべて異なるデザイン。遊び心を感じます。

ボンボンは東区高岳に本店があり、名古屋の洋菓子店の草分け的存在です。第1次大戦後に名古屋に抑留されていたドイツ人俘虜に洋菓子作りを教わったのがルーツだそうです。 「名古屋に本社を置く敷島製パンもドイツ人俘虜の指導でパン作りを始めました。名古屋の食文化の発展に、ドイツ人俘虜が大きくかかわっているんです」と大竹さん。
ここでは、ドリンクを注文するとおつまみとしてカステラが付いてきます。カステラはコーヒーのおまけ用にわざわざミニサイズを作っているそうです。日替わりでエクレアなどもあるそうなので、また足を運んで全ての種類を食べたいものです。

「オープンは昭和35年1月。本当は前年に開く予定だったのが、伊勢湾台風で一度ぺちゃんこになってしまい、工期が延びたんです」とはマスター・楯さん。マスターの語る思い出話や、大竹さんの喫茶店にまつわるうんちくに耳を傾けながら、コーヒーをすすり、カステラをつまみます。レクチャーを聞くというよりも、喫茶店の一お客さんとしてゆるやかな時間を過ごしている気分です。
ボンボン桜山店の横には、どこか懐かしく昭和の雰囲気のある「ボンボンセンター」という横丁があります。時が止まっているかのような横丁の空気を象徴しています。

以上で、2軒の喫茶店を巡りながらのレクチャーが終了しました。 カフェが全盛の昨今ですが、これから先も、名古屋文化の象徴である喫茶店を残していきたいと感じました。若い人も年配の方も、喫茶店の空間の和みを求めて、気軽に足を運び、集ってみてはいかがでしょうか。
ご協力いただきました珈琲エーデルワイス・ボンボン桜山店の方々、そして参加者の皆様、とても楽しい企画になったことを嬉しく思います。本当にありがとうございました。
(学生ボランティア 高岸杏名)