舞台が動く?奈落(ならく)って何? 親子で劇場探検しよう!
美術館・芸術劇場・文化情報センターの複合施設。
生演奏を聴いたり、普段見られないバックヤードや舞台転換を目前で体験する親子プログラムを開催。
プログラムの詳細については、こちらをご覧下さい
http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/2013/13gekijyo/index.html
愛知芸術文化センター
AIchi Arts Center
8.15.thu 13:00-15:30
- 定 員=300名(対象:小学生と保護者)
- 司 会=中村ゆかり
(愛知県立芸術大学非常勤講師)
- 設 計=A&T建築研究所
- 施 工=大成建設
- 竣 工=1992年
- 住 所=名古屋市東区東桜1-13-2
オープンアーキテクチャーの第一弾は、「親子で劇場探検」と題したキッズプログラムで、愛知芸術文化センターを会場にスタートしました。参加者は、小学校1~6年生の子どもとその保護者約300人です。愛知芸術文化センターは、劇場や美術館といった芸術文化を発信するための様々な施設がありますが、今回見学するのは大ホールとコンサートホールです。
参加者は受付を済ませると、まずはコンサートホールへ向かいました。親子が着席する1階席とステージは、すぐ近く! ステージには、3台のピアノが並んでいます。どれも異なる種類のピアノですが、どんな音色がするのでしょうか。また、このホールの特徴の一つである残響時間2.1秒という響きは、どんなふうに耳に届くのでしょうか。
中村ゆかりさんの司会で、いよいよプログラムが始まります。コンサートホールで行う第1部は、中村ゆかりさんのナレーションと4人の演奏家による音楽劇「ブレーメンの音楽隊」。物語はクラシック音楽の演奏によって表現されていきました。しかも演奏されるクラシック音楽は、 “一度は聴いたことのある”メロディーばかり。ピアノは金澤みなつさん。オーボエは柴田祐太さん(イヌ役)、ヴァイオリンとヴィオラは江頭摩耶さん(ネコ役)、テノールは田中健晴さん(ニワトリ役)です。舞台正面にはあいちトリエンナーレ2013出品作家である山下拓也さんによる絵本調のスライド上映もありました。
それぞれの楽器の音色や歌声は、マイクやアンプなどの音響機器を使用しなくても美しく響きます。ヴィンヤード型と呼ばれる客席構や、カーテン型の壁、天井から吊るされた反響板などによる効果で、音楽劇の鑑賞とともに、じっくり体験できました。
「ブレーメンの音楽隊」を鑑賞したあとは、約20分間、思い思いにバックステージを探検です。照明等の操作卓といった機械的な装置から、楽器庫、あるいは世界中の楽団のサイン入りポスターが見られるなど、コンサートホールならではの見どころがありました。特別にパイプオルガン内部の見学や、楽屋の見学もできました。またステージ上では、たった今演奏してくださったアーティストが直接楽器を弾いて見せてくれたり、子どもに弾かせてくれたりするというスペシャルな交流もあって、記念撮影にも応じてくれました。
思い思いの楽しみ方でコンサートを満喫した後、第2部を行う大ホールへ移動しました。
愛知芸術文化センターの大ホールは、オペラやバレエなど様々な舞台芸術が上演できるホールで、客席は2500席。日本最大級の設備や大きさをもったホールです。コンサートホールが音の響きを重視している一方で、大ホールは様々な舞台機構がその特徴。まず舞台責任者である中村さんが、座席数やオーケストラピットの説明、舞台上の仕掛け、音響、照明などについて解説してくださいました。
そして音楽とともに解説された仕掛けが実際に動き出し、「舞台機構ショー」を楽しみました。舞台の床が上がったり下がったり、回ったり……。部分的に動かされて階段のようになるなど、設備は大がかりなのに動きはとてもスムーズで、いったいどのように操作されているのか不思議なほどでした。
最後は、子どもたちがお待ちかねのプログラム、「奈落体験」です。二組に分かれて舞台の上に実際に乗り、最初に4.5m上昇、それから元の位置に戻ってから、そのまま約13m下の奈落まで降りるのです。
前半と後半、二組に分かれてステージに上がります。普段なかなか見ることのできないホール内部が一望でき、とてもきれいでした。そしてエレベーターのように床がゆっくりと上昇し始めました。4.5mといっても、意外に高いです! 舞台に乗った150名と、客席に残る150名が顔を見合わせ、手を振り合います!
今度はゆっくりと下降を始め、そのまま舞台の下まで降りていきます。合計17.5m下降するわけです。普段見られない舞台下には、大きな機材や、どんな時に開けられるのか分からない宙に浮いたように見える扉などがあって、複雑な内部をうかがわせました。
いよいよ奈落へ降りる頃、見上げると舞台(天井)が閉じていくではありませんか! 直径約16mの「回り盆」と呼ばれる装置がついた舞台を、後方から前面へ移動させていたのです。これによって奈落の天井(舞台面)は一度完全に閉じられたのですが、すぐに再び開き、元に戻っていきました。本当に大がかりな設備で、迫力満点です。
奈落へ降りると、また元の高さへ上昇しました。だんだん元の高さに近づき、再び舞台上の150名と客席に残る150名が顔を見合わせる瞬間がやってきます。“地下”から戻った150名は、すがすがしい笑顔で客席に手を振りました。
全員が奈落を体験し、プログラムは終了。約2時間半、とても充実した時間でした。
本格的なクラシック音楽を鑑賞することも、大がかりな舞台装置を目にすることも、普段はなかなかできない体験です。大概のことはテレビやDVDなどで済ませられてしまう近頃ですが、ときにはホールへ出かけ、一度しか体験できない、実際の上演を鑑賞するのは、やはり素晴らしいことだと思いました。特に今回のような、その“裏側”をのぞかせてもらえる機会はなかなかありません。参加した子どもたちは、音の響きや機材の操作といった“作り手側”の努力や工夫に気づけたのではないでしょうか。
愛知芸術文化センターの皆さん、参加アーティストの皆さん、ありがとうございました。参加者の皆さん、ぜひまたホールへ遊びに来てくださいね!
(オープンアーキテクチャー推進チーム 寺井真理、学生ボランティア 山田光)