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これが木造二階建て!? 風と光が心地良い大らかな家
三河湾に浮かぶ佐久島のアート作品「おひるねハウス」の展開から生まれた住宅です。
床に座って足をぶらーんと、心地良い風に吹かれるあの体験が甦ります。
高低差のある、くの字にくびれた敷地を生かした広義にワンルームの木造の大空間。
大階段や建物を貫くボリュームは、舞台装置やむき出しの洞窟のような迫力です。
建物中央にはぽっかり空いた屋外テラスも。
様々な居場所をみつけられる、住まい手の大らかさと呼応した空間です。

naikan
透明な地形

Transparent Topography

10.12.sat 14:45-16:15
  • 定 員=20名
  • ガイド=南川祐輝(建築家)、近藤禎義(住み手)
  • 設 計=南川祐輝建築事務所
  • 施 工=箱屋
  • 竣 工=2012年
  • 住 所=岡崎市(個人宅)
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強風ながら青空に恵まれた10月12日に実施されたのは、オープンアーキテクチャー第13弾、建築家・南川祐輝さん設計の「透明な地形」です。名古屋鉄道本線・東岡崎駅から線路沿いを緩やかに登ること15分。建物にぽっかり穴の空いた白い建物が見えてきました。線路の向こう側の景色を四角く切り取る外部テラスと、くの字に折れ曲がった外観が特徴の個人邸です。
建物前では、本日のガイド、南川さんと住まい手の近藤さん家族が迎えてくださいました。前庭で風に揺れるハーブの香りが漂うなか、4つの筒が突き抜けた建物全体の構成を聞いた後、土間玄関から中に入りました。

白い外観に対して、室内は木を全面に使った舞台のようで、奥の深い洞窟に似たダイナミックな空間です。ちょうど、くの字が折れた所にある大階段に腰をかけて、南川さんに見学のポイントを伺いました。
南川さんが近藤さんの住宅を設計することになったきっかけは、三河湾に浮かぶ佐久島と日本海に面する新潟市のアートプロジェクトでつくられた「おひるねハウス」だそうです。東京から岡崎へ引っ越しを決めた近藤さん家族は、この「おひるねハウス」の存在を知って、南川さんであれば、きっと面白い住宅を建ててくれると直感したのだとか。「個室も収納もいらない、ざっくりとした生活が好き」と近藤さん家族。南川さんは最初に敷地を訪れたときのインスピレーションをそのままに敷地のかたちに沿って建築化していったと言います。
4つの筒は便宜上、主寝室、子供室、浴室、外部テラスとなっていますが、室の用途は特に制限されていません。季節や時間や天候によって、室内にはさまざまな床レベルがあるので、家族が集う場所も各々寝る場所も変わります。外部テラスは、両親が留守の際の子どもたちの玄関や勉強スペースに、また浴室でさえ月に一度開く雑貨店のショールームになります。風が動く大空間と、さまざまな特徴のある開口部。いつもすべての空間が快適なのではなく、自分たちで心地よさを探りながら過ごすという、その大らかさに感服しました。

レクチャー後は、実際に室内外を見学して回りました。屋外階段から、室内階段から、さまざまに行き来できるルートの各ポイントで解説を受けました。外部テラスは息子さんが案内役です。この場所では、学校から帰って両親が帰宅するまで宿題をしながら留守番したり、家族でご飯を食べたり、夏の花火大会を楽しんだりするのだとか。眼下では赤い電車が頻繁に行き交い、風も風景も何もかもが心地よく動いている、よどみのない空間でした。

この住宅は、木造二階建てながら床の高さとそれらをつなぐ階段のあり方が多様で、大変楽しいお家でした。このような自由なライフスタイルで、のびのび暮らしている家族がいらっしゃるのかと思うと、こちらまで清々しい気持ちになります。
「透明な地形」という名前は、名古屋にいた南川さんの「透明な」というイメージと当時東京にいた近藤さんの「地形のような」という言葉のやり取りから生まれたものだとか。建築は、建築家だけでも住まい手だけでもできない。その必然をまさに教えてくれる関係ではないかと感じました。
空間を体験するたびに驚きの笑顔となる参加者の表情が大変印象に残っています。ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。

(オープンアーキテクチャー推進チーム 道尾淳子、学生ボランティア 三浦夏美)