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名古屋のど真ん中で涼む モザイクタイルと屋上の音楽会
徳川政権下、1615年創業の老舗百貨店。
戦後の焼け野原の跡に再建された本館は、建築界の巨匠・村野藤吾の設計で増築され、
国内百貨店として唯一日本建築学会賞を受賞しています。
名古屋広小路と繁華街・プリンセス大通り(呉服町通)の交差する角地に、愛知ならでは窯業の粋を集めた外観。
ガラスブロックと薄紫色タイルで構成された壁面、濃緑ベースに色鮮やかなモザイクタイルの大壁画は圧巻。
大理石使いやエレベーター扉などのアートワークも必見です。
オープンアーキテクチャースペシャル企画 「屋上の音楽会」
名古屋芸術大学「KLAR(クラール)」
菊池京子(ソプラノ)佐藤なつみ(ピアノ)長尾麻友香(電子オルガン)
-PROFILE-
2012年に名古屋芸術大学の在学生と卒業生 により結成されたアンサンブルです。ソプラノ、電子オルガン、ピアノによって構成さ れており、愛知県、岐阜県を中心に活動しています。「KLAR」とはドイツ語で「透明な」という 意味を持ち、メンバー3人が奏でる色彩豊かで透明感のある音 色によって、様々な音楽を作り、また、音楽を通じてたくさん の幸せを届けたいという思いが込められています。
-曲目-
1.乾杯の歌/ヴェルディ 2.仮面舞踏会よりワルツ/ハチャトリアン 3.ダンシングクイーン/ベニー・アンダーソン 4.上を向いて歩こう/中村八大 5.見上げてごらん夜の星を/いずみたく 6.花は咲く/菅野よう子

naikan
丸栄

Maruei Department Store

9.8.sun 14:30-16:30
  • 定 員=20名
  • ガイド=倉方俊輔
        (建築史家、大阪市立大学准教授)
  • 設 計=村野藤吾/村野・森建築事務所
  • 施 工=清水建設
  • 竣 工=1953年/1956年、1984年増築
  • 住 所=名古屋市中区栄3-3-1
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オープンアーキテクチャー第8弾は「名古屋のど真ん中で涼む モザイクタイルと屋上の音楽会」というテーマで、徳川政権下1615年創業の老舗百貨店、丸栄を見学しました。残暑厳しい名古屋を想定してのテーマ。当日午前は強い雨が準備を阻みスタッフ一同を不安にさせましたが、本番直前にして一変、秋晴れの絶好の陽気となりました。

まずは、建築史家・倉方俊輔さんによる見学ポイントのレクチャーからスタートしました。丸栄の現在の姿は、戦後の焼け野原に当初建設されていた地上3階地下2階から、建築界の巨匠・村野藤吾氏によって1953年以降幾度か増築設計を重ねてきたものです。そうした変遷、村野氏のその他多数の建築、同年代の建築家・丹下健三氏との比較など幅広い視点からお話いただきました。

いよいよガイドツアーへ。屋上9階から11階へ移動し、名古屋城下を見下ろしながら、改修を免れたオリジナルの意匠を確認した後、屋上からは地下2階まで階段を使って移動しました。上階にある滑らかな手摺のデザイン、階下に行くほど豪華な大理石の壁など、階ごとに異なる村野意匠に触れることができました。

続いて一行は、人々で賑わう街の中へ。街を彩るこの建物最大の魅力、外観を見学しました。薄紫色の小口タイル(カラコンモザイク)とガラスブロックによる縦長の端正なデザインも実は、上へ行くほど空に溶けていくような8段階の色の濃淡でできています。そして、西日に輝く壁面は、濃緑ベースに色鮮やかなモザイクタイルの大壁画で圧巻の手仕事です。今となっては図面も残されていないので、画の題材は何か、タイルの厚みも凸凹、目地巾やモルタル色もさまざまである理由など計り知れませんが、とにかく遊び心に富んでいて、長時間見ていて飽きることはありません。

他の通りからも丸栄を眺めました。プリンセス大通り(呉服町通)と広小路通の交差点は建物全体が隅切りの形体、広小路通側には鳥の彫刻と大看板、伊勢町通側には安藤忠雄氏設計のビルが隣接しています。店舗を増床するまでは広小路側にピロティ空間があったこと、花崗岩とガラスブロックの埋め込まれた路面が雨の日は特にきらびやかであったこと、1階中央には地下2階まで通じる大階段があり、その背後にえんじ色の大理石に囲まれた東郷青児氏のエレベーター扉画がずらっと並んでいたことなど。かつてのドラマティックな空間の展開に想いを馳せながら、再び屋上へ歩を進めました。

屋上では、名古屋芸術大学の在学生と卒業生で結成された「KLAR(クラール)」による演奏会が待っていました。ソプラノ、ピアノ、電子オルガンの透き通った音色で、昭和生まれの歌謡曲など6曲が奏でられました。

丸栄は、日本の百貨店建築で唯一日本建築学会賞を受賞している価値の高い建物ですが、残念なことにこの事実はほとんど認識されていません。周辺は再開発目まぐるしく歴史的建造物が次々と姿を消しています。数少ない生き証人としての丸栄。先人たちが作り上げてきたこの姿をもっと大切に考えていきたいと思いました。
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

(文=オープンアーキテクチャー推進チーム 道尾淳子、学生ボランティア 野々山あかね)