2013年10月28日および29日、中日新聞に「あいちトリエンナーレ2013 記者座談会(上・下)」と題する記事が掲載されました。記事内には少なからぬ数の事実誤認と、事実に基づいていない批判があり、全体の企画意図や現代美術部門などについて、五十嵐太郎芸術監督がツイッターなどで反論しています。

同記事には、私が統括担当したパフォーミングアーツ部門についての発言もありました。詳しくはREALTOKYOに掲載した拙文「中日新聞5記者への公開質問状」<http://www.realtokyo.co.jp/docs/ja/column/outoftokyo/bn/ozaki_252/>をお読み下さい。

ここでは、イリ・キリアン氏についての「記者D」の発言についてのみ、異議を申し述べるに止めます。日本を愛し、大震災に心を痛めていた氏は、無理を押して「津波の犠牲者に捧げられる」新作を作って下さいました。そんな氏への非礼きわまりない(そして事実に立脚しない)表現を、担当プロデューサーとして看過するわけにはいきません。以下、11月1日付けの「公開質問状」より引き写します。

下2段目・記者D発言
今回はオノ・ヨーコや世界的な振付家イリ・キリアンらトリエンナーレの「顔」となるアーティストが作品出品のみで、会場入りしないまま。キリアンは内容的にも評価は分かれた。(中略)現場にアーティスト本人が居合わせないのでは、盛り上がりに欠けるし、なんだかコケにされているようで釈然としない。
 イリ・キリアン氏は「残念ながら私は飛行機に乗ることができず、名古屋での世界初演に立ち会うことができない」と語るビデオメッセージを寄せて下さり、我々は記者発表時にビデオを上映するとともに、メッセージを和訳して配布しました。健康上の理由が示唆されているわけですが、貴紙のこのコメントは氏に対する甚だしい非礼であり、著しく配慮を欠くものだと思われませんか。
 また、キリアン公演『EAST SHADOW』は、多くの新聞・雑誌・ウェブサイトにおいてご好評を賜りました。観客アンケート、いくつかのブログ、Twitterなどにおいても、我々が集計した限り、好評が不評をはるかに上回っています。「評価は分かれた」という場合、日本語では普通、「半々」「相半ば」を意味するかと思いますが、上のように書かれた根拠を教えて下さい。なお、もちろんご存じでしょうが、ほかならぬ貴紙10月5日付け夕刊にも、安住恭子氏による好意的な記事が掲載されています。
この件について、座談会に参加した5名の記者に強く抗議します。

2014年2月25日
あいちトリエンナーレ2013パフォーミングアーツ統括プロデューサー 小崎哲哉