8月16日、愛知芸術文化センター12階アートスペースGにて、パブリック・プログラム クロス・キーワード「名古屋のオルタナティブスペース」を開催しました。クロス・キーワードは、分野を越えたアーティストや専門家によるトークセッションで、この地域の特性や魅力をさまざまな切り口から探るプログラムです。今回は90年代末からオルタナティブな活動を展開してきたdotの石田達郎さん、+GALLERY PROJECTの平松伸之さん、N-markの武藤勇さんからお話を伺いました。
アートが見られる場所というと、美術館やギャラリーが一般的ですが、それらとは異なる自立したアートスペースのことをオルタナディブスペースと呼びます。欧米のアートシーンに由来し、日本では1980年代から設立されました。公設民営の施設から作家自身が運営するものまでありますが、倉庫やビル、学校などを再利用している場合がほとんどで、美術館やギャラリーではできない自由で柔軟な表現が可能な場として機能してきました。共同アトリエのdot、外部の作家を中心とした展覧会を企画・運営する+GALLERY PROJECT 、展覧会に限らず作家と作家、作家と社会をつなぐ場をつくるN-markは、この地域の現代アートシーンに少なからず影響を与えてきました。
各団体のプレゼンテーションの後、「オルタナティブの活動がトリエンナーレに影響しているか」について、「僕らの活動をトリエンナーレのキーパーソンが見て、関係ができれば発表の場につながる」(石田さん)、「ほかの国際展には影響しているかもしれないが、あいちでは影響していないと思う。韓国では、国際展の中でオルタナティブの団体やキュレーターが発表できる場がある」(平松さん)、「地元作家や若手の起用が少ない。もっと地元作家のステップアップにつながるといい。僕らも一緒にできることがあるといいと思う」など意見が交わされました。
「今後のオルタナティブのあり方」については、「美術館など既存の施設と連携していけたら。海外ではオルタナティブな活動を受け入れている施設も少なくないが、日本では予算や行政的な絡みで難しい」(平松さん)、「日本ではアートは文化政策として確立されていない。政策ができると僕らも行動しやすい」(武藤さん)、また「オルタナティブは今後も必要か」については「美術館やギャラリー以外にも作家をサポートできる組織や場所があるのはいい」(石田さん)、「運営資金をどう捻出するかが問題。自己負担や助成金に頼るしかない」(平松さん)、「オルタナティブを見ればその地域のアートシーンがわかる。なぜオルタナティブが疲弊しているかを考えると、名古屋のアートシーンがおもしろくなるのでは」(武藤さん)と話されました。
会場からの「名古屋の若手に対して思うことは」という質問には、「もっとぐいぐい売り込みに来てもいい」(武藤さん)という発言も。名古屋のアートシーンやトリエンナーレを、オルタナティブという視点から考える機会となったのではないでしょうか。
(あいちトリエンナーレ2013エデュケーター 田中由紀子)