【公式ガイドスタッフによる裏ガイド 】⑦無料でみる!あいトリ[雨の豊橋編]

写真 2016-09-24 14 14 06

タダでいかにあいトリを楽しむか。芸文、ナゴヤ市内と回ってきたが、いかんともしがたい有料エリアの魅力……。もはや企画の意義はないに等しいものの、ここまで来たらどんどん行くべし。新たに加わった地区、豊橋へ足を運んでみた。

向かったのは9月末日、曇天の名古屋・金山駅からJR東海道本線へ乗り込む。豊橋に近づくにつれ次第に厚くなっていく雲。気づけば車窓から見える景色は完全に雨模様である。こんな素晴らしい芸術祭をタダで楽しもうなどと、やはり日頃の行いの悪さか?「自分が来たから雨が降った」「観戦するとドラゴンズが負ける」。世の雨男・雨女はいつもこんな気分なのだろうか……。

写真 2016-09-24 13 17 33
駅を出てすぐの風景。とっても昭和感ありますね。マチのランドマークはスペースシャトル。

普通電車で40分、ちょっとした旅情を感じはじめた頃に豊橋に到着した。市内は見事なまでの土砂降りだが、駅周辺スロープの有り難さに気づけるのはこんな日ならでは、か。まずは愛知芸術文化センターで入手した「三河まっぷ」に目を向けてみる。むぅ……明らかに無料エリアは少なそうな雰囲気。穂の国とよはし芸術劇場PLATは無料という情報はあったので、まずはそれ以外の市内展示を攻めてみることにした。スロープ区間を抜け水上ビルに向かう。

写真 2016-10-05 18 58 23
Mikawa Art Center[MAC]制作の「三河まっぷ」は現地でも手に入る。裏面には作品制作中の秘話も。

写真 2016-09-24 13 14 48
豊橋駅構内から市内まではスロープ完備。なんと穂の国とよはし芸術劇場PLATまで直結。

水上ビルまでは徒歩5分ほど。同ビルのお店や施設は、建物を挟む左右の歩道から入場可能という特殊な作りだ。歩道はどちらもアーケード付きで雨の日は本当にありがたい。まずは栄養補給を、ということで公式ガイドブックでも取り上げていた鉄板焼屋さん、伊勢路へ入ってみた。実はお好み焼きは広島派なのであるが(蒸し焼き&おたふくソースのアレ)、伊勢路のフワフワ具合は関西風でないと出せない食感。「食が充実してると旅は楽しいよなぁ……」。ふと、まだ一作品も見ていないことに気付き、食レポしている場合ではないと外へ繰り出した。

写真 2016-09-24 13 24 29
全国的に撤去の動きというアーケードだが今日は有り難さが身にしみる。各所、雨漏りしているが……。

写真 2016-09-24 13 29 25
伊勢路さんは地元客&あいトリ客も多数。スタッフTシャツの方もおり、もはやオフィシャル食堂という趣。瓶ビールはキリンかアサヒである。

水上ビルには話題のラウラ・リマによる文鳥の自宅マンション(?)など、3アーティストの作品が展示されている。基本、すべてチケットが必要なのだが、イグナス・クルングレビチュスの一部作品だけは無料で見られる。とはいえ、彼のメイン展示は有料なので非常にもどかしい。

写真 2016-09-24 14 45 38
花火屋が選べるという味わい深過ぎる水上ビルだが、そのひとつに隣接するカタチで展示。

写真 2016-09-24 14 47 36
作品前の水たまりは、雨漏りが作り出した偶然の演出と思われる。

ネタバレすると、穂の国とよはし芸術劇場PLAT以外の無料展示は、本作と、駅最寄りにあるはざまビル大場1Fのリビジウンガ・カルドーゾの作品のみ、なのである。いや、豊橋まで来てこれしか見られないのはつらすぎる!というわけで無料ツアーは早々に挫折。ここで裏技を使うことにした。豊橋と岡崎では、エリア限定の鑑賞券が発売されているのだ。

写真 2016-09-24 14 49 20
豊橋地区限定チケットは、みずのうえビジターセンター(水上ビル)ではなんとガチャガチャで販売。

300円。伊勢路のお好み焼きより安いので買いましょう!

写真 2016-09-24 15 25 35
リビジウンガ・カルドーゾによるスペーシーなDJブース。ジェフ・ミルズが宇宙と交信しながらDJするには最適か。物々交換で会期後の引き取り手募集中らしいので、ご自宅、店舗に余裕がある方はぜひ。

詳細は他のレポートでも取り上げられているので割愛するが、豊橋地区は他エリアにない魅力を多く持つ地区だ。展示スペースには都心部にない余裕があり、愛知県芸術劇場などではどうやっても難しい贅沢な会場使いが、作品に多くの恩栄を与えているのだ。メイン会場から離れた、豊橋という場所ならではのメリットだろう。特に駅前の開発ビルは、個人的には今回のトリエンナーレ会場のなかでも随一の充実度に感じた。というわけで豊橋を訪れたアートファンは絶対にチケットを買いましょう!(当たり前ですが)

写真 2016-09-24 15 55 43
各作品を見終わった後には、開発ビル一階のレコード屋も必見!

写真 2016-09-24 18 01 34
開発ビルを出た頃に日没。マチのランドマークもライトアップされております。雨も上がった!

「出張ついでに、ちょっとだけあいトリをのぞきたい」という方は、穂の国とよはし芸術劇場PLATへ足を運んでみるのがおすすめだ。名古屋、岡崎でも展開されているジョアン・モデによる参加型の作品、そして大巻伸嗣による作品は9月から光量アップで、建物の外からでもインパクト大。明るい時間帯に一度観覧した方も、帰宅前に再度訪れてみることをおすすめする。PLATは前述の通り、コラムプロジェクト含めすべて無料で鑑賞することができる。

写真 2016-09-24 18 06 25
穂の国とよはし芸術劇場PLATまでは駅構内のスロープで。途中で水上ビルも見渡せる。

写真 2016-09-24 18 31 53
見よ、この光量!9月からパワーアップしたとのことなので、機会ある方はぜひ再度訪問を。

「展示時間も終了したので帰るか」もなんなので、名古屋までの最終電車の23:00前後まで街なかへ繰り出してみた。豊橋駅西口付近に広がる西駅エリアは、小じんまりとしたカウンター中心ながら個性的な呑み屋が多いうえ、新店も多数。若いオーナーが手がけるお店も多い。飛び込みで入った焼き鳥屋も美味だった。いい気持ちになってきたところでタイムオーバー。後ろ髪引かれつつ駅へと向かった。やっぱり「食が充実してると旅は楽しいよなぁ……」。

写真 2016-09-24 18 45 10
西駅エリアはなかなかの風情。明るめな東口とは、いい意味でコントラストの違いあるのでお好みで。

写真 2016-09-24 19 07 26
鳥の作品を見た後にアレですが……でも旨いものは旨いのだ。西駅のお店はどこもリーズナブルな印象。

豊橋行脚は予想を超える土砂降りだったが、駅周辺のスロープやところどころにあるアーケードのおかげで、不快な思いも最小限に留めることができた。スロープ&アーケードがなかったら正直心折れてたかも……。おかげで雨がむしろ、この街に点在するレトロなビルたちの昭和感をより演出してくれた気すらする。そして、それらと適度な違和感を持ちながらも絶妙に溶け合う多国籍な現代アートたち。実は「あいちトリエンナーレ」のテーマを最も体現しているのは、豊橋地区なのではないか。帰路の電車内でほろ酔い&うたた寝しつつ、雨の豊橋を総括したのでした。

TEXT:阿部慎一郎

 

サイドナビ