アジアン・サウンズ・リサーチの「OPEN GATE 2016」日本とアジアの音楽交流プロジェクト

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10月6日(木)~10日(月・祝)に「岡崎シビコ」屋上で上演される「アジアン・サウンズ・リサーチ」の公演『OPEN GATE2016』は、岡崎地区及び舞台芸術で最も注目される作品の一つだ。

アジアン・サウンズ・リサーチは国際交流基金アジアセンター主催の音楽交流プロジェクト。日本とアジアで音を中心とした新しい表現や実験を紹介し合うリサーチを重ねて、音楽と美術両ジャンルの特徴を生かし、間にある未知の表現を発見し、生み出していく活動。現地の人々、場所と共に新たな表現を丁寧に追求していき、その過程や議論をアーカイブ化する事を指針としている。

ディレクターを務めるSachiko M(サチコ・エム)さんは、テスト用の信号音(サインウェーブ)を使った電子楽器を演奏する即興音楽家。2003年に世界的な先端技術・アートを表彰する「アルスエレクトロニカ」のゴールデンニカ賞を受賞。サウンドインスタレーション作品の発表のほか、大友良英さんと共にNHKドラマ「あまちゃん」の劇中歌「潮騒のメモリー」を作曲するなど、国内外で精力的な活動を続けている。

Sachiko Mさんは2014年から東南アジアでリサーチを重ね、翌2015年にマレーシア・ペナン島で第1回企画展覧会「OPEN GATE」を開催。日本から2人、ペナン島から2人のアーティストが参加し、展示エリアを固定せずに広く自由な空間を共有。それぞれのアート作品や参加するゲストアーティストなどに影響を受け合いながら、約3週間にわたり日々ゆるやかに変化していく展示を行った。

「アジアン・サウンズ・リサーチ」ディレクターのSachiko Mさん
Sachiko M

岡崎シビコで発表されるのは、第2回企画展覧会&パフォーマンス公演。アジアン・サウンズ・リサーチの国内初演となる。Sachiko Mさんは2015年の展覧会終了後も東南アジアでリサーチを継続しており、今回のパフォーマンスにはマレーシアから3人、カンボジアから1人のアーティストを招へい。国内からは8人が参加する。美術家、写真家、音楽家などがそれぞれの特徴を生かしながらビジュアルアーツ作品とサウンドパフォーマンスを融合させ、訪れるたびに違った姿を見せる動き続ける空間を生み出すという。Sachiko Mさんの盟友、大友良英さんの出演も決定している。

アーティストらは岡崎市に滞在し、街の空気や参加者同士の会話を共有しながら、美術展示や演奏・パフォーマンスを準備。公演当日のパフォーマンスは日没近くの17時頃から始まるが、観客は15時から入場して変化していく会場の様子を見ることができる。

上演に先がけて名古屋で行われたトークイベントに出演したSachikoさんは「シビコの屋上はとても広く、岡崎の街の静けさも相まって独特な雰囲気を持つ異空間に感じた。その広々とした抜け感を最大限に生かしたい。あまりコントロールせずに作品発表やパフォーマンスをしてもらいたいので、日によってまったく違う内容になるはず。隙間の多い緩いい感じを作り出すので、観客は音の空間に溶け込んでいただけたら」と話す。

「あいちトリエンナーレは、説明が難しい展示を受け入れてくれる懐の深い芸術祭。『虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅』というテーマも、旅に出て人に出会ったり、迷ったりしながら作るアジアン・サウンズ・リサーチの発表の場として、とても合うと感じる。これまでのリサーチの成果を基に、伸び伸びとやらせてもらいたい」と意気込みを語った。

おそらく、多様な出展作品の中で、最も事前の解説が難しいパフォーマンスの一つ。百聞は一見にしかず。いや、見るだけではなく、聴こえる音、肌に触れる風、夕陽が沈み変化していく温度、そして街の風景を余すことなく体感してほしい。丁寧に時間をかけたリサーチと交流から創出された、美術と音楽の間に生まれては消える説明できない特別な瞬間を味わえるはずだ。

TEXT:竹本真哉

 

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