【レポート】開発ビルの現代アートへ豊橋の人情にふれる旅

開発ビルレポート-1

豊橋駅前大通会場のひとつである開発ビルへ。10階建のビルの中に9つの現代アートが展示されています。興味のある作家の作品だけを観てまわるのもいいですが、せっかく豊橋まで訪れたのなら、なるべく多くの作品に触れたいところ。おすすめの周り方は、まずはエレベーターで最上階の10階まで上がり、上から下に向かって鑑賞する方法。見逃すことなく、すべての展示を効率よく観ることができます。

まずは10階の石田尚志さんの展示室へ。豊橋文化ホールの劇場や楽屋に展示されている作品は、ホールならではの独特な空気感に動きのある作品があいまって、観ていると不思議な感覚に引き込まれていきます。9階には、砂糖と卵白を使うロイヤルアイシングという技法で描かれた真っ白な壁画が登場。佐々木愛さんが作る壁画は、閉幕後は取り壊されてしまい会期中しか観ることができない限定作品です。作品をより美しく写真で残すため、多くの観客がカメラを向けていました。8階には岡部昌生とニコラス・グラニン、6階には小林耕平グリナラ・カスマリエワ&ムラトベック・ジュマリエフの作品が展示されています。

石田尚志1
石田尚志

佐々木愛
佐々木愛

小林耕平
小林耕平

各フロアの会場間を結ぶビルの階段は、赤色と黄色で配色されておりレトロ可愛い雰囲気。廊下の窓からは、豊橋市の象徴でもある路面電車が走る姿も見られます。5階には久門剛史ハリル・ラバーの作品。久門剛史は音と光がモチーフのインスタレーションを4つの部屋に渡って展開。カチコチと鳴る時計音や、水滴の音、扇風機からの風、なびく布、ほわっと優しく灯る光など、少しの時間、その場に佇みたくなる空間が続いています。

久門剛史2
久門剛史

会場からの路面電車


そして、最後は2階にあるハーバード大学感覚民族ラボの展示室。入室前に船酔いなどされる方はお気を付けくださいと注意喚起あり。入ってみると、ほぼ暗闇に近い会場で、大スクリーンに遠洋漁業の映像が流れています。展示室には、映像を観るための特大クッションがいくつも並んでいて、観客の多くは寝転んで鑑賞することができます。アート観賞は作家の熱い思いが込められているものが多いため、真剣に観るとパワーを消耗します。たっぷり心身を使って鑑賞した後に、クッションに体を預けながら観られるのはちょっとうれしいポイント。と言っても、そこはアート。体は休憩しながらも、映像からは語りかけてくる思いがこちらに伝わってきます。揺れ動く船の映像に身をまかせすぎると確かに船酔いしそうになりますが、飛び交うカモメ(?)の姿は幻想的で気持ちが洗われます。豊橋地区で数多くある会場の中でも開発ビルの展示は、ひとつだけで十分な見応えがありました。

そして、開発ビルを後にしてから、公式ガイドブックに掲載されていた店を訪れてきました。まずは、港監督も推薦していた鉄板焼屋「伊勢路」さん。蝶ネクタイがトレードマークの紳士な店主が笑顔で迎えてくれます。関西の有名店での修行もあり、その道60年という店主が目の前で焼いてくれるお好み焼きは、ふわふわ柔らかで絶品。また、うれしかったのは豊橋の人情に触れられた点です。常連さんたちが気軽に話しかけてくれ、ビールをごちそうしてくれるといううれしいサプライズも。温かい雰囲気に気持ちもほっこり。店主の話によると、店の近くで展示している作家さんがよく来店してくれるとか。アーティストさんと肩を並べてお好み焼きを食べるなんていう素敵なシーンが実現するかもしれませんね。店主や常連さんとの会話も楽しんだ後、次は隣にある老舗ジャズ喫茶「grotta」へ。こちらでも笑顔の優しい店主が迎えてくれます。壁一面にレコードが並べられた店内には心地いいジャズが流れています。自ら話しかけることはない店主さんにジャズの質問をしてみると、求めていた以上の素敵な答えが返ってきたりして。豊橋で長く愛される名店の店主に会いに行くだけでも、豊橋を訪れる価値はありそうです。

伊勢路2

grotta2

TEXT:小玉みさき (エディマート)

    
 
 

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