あいちトリエンナーレ2016、開幕!芸術監督・港千尋氏の熱い思いも

kaimaku

8月11日(木・祝)より始まった「あいちトリエンナーレ2016」。
終幕の10月23日(日)までの74日間。名古屋・岡崎・豊橋のまちなかを中心に、いたるところで作品が展示され、映像が上映され、パフォーミングアーツが上演される。
最終的に38の国と地域から119組のアーティストが参加することになり、今回は特に外国からの参加が多いことも特徴のひとつだ。

[現代美術]
●国際展
参加作家:85組(国内の芸術祭に初参加=21組/新作を展示=66組)

●映像プログラム
参加作家:25組(劇場公開に先駆けて新作を上映=4組)

[パフォーミングアーツ]
参加作家:10組

[プロデュースオペラ]
モーツァルト作曲『魔笛』上演

またもうひとつの特徴として、国内の芸術祭に初参加、新作、愛知では初披露など、初モノが多いという。
それだけに前知識のないアーティストが多く、何を観ようか悩んでしまうかもしれないが、何気なく足を運んだ場所で新たな出会いをする可能性も多いということにもなる。
そして、今後も含めて、日本ではなかなか観られないアーティストも多い。
芸術監督の港千尋いわく、「本当に色彩豊かで、形も音も、そして身振りも、今私たちが生きている現代を象徴しているような、アーティストたちが日々呼吸している空気を肌で感じられるような作品がそろいました。緊張感を持ちながら、しかし開かれた表現を見て頂けると思っています」とも話す魅力あるアーティストばかりなので、この機会にいろいろと巡ってみよう。

話は今年のテーマ「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」にも及ぶ。
いくつかの芸術祭では、テーマを掲げつつもそれほど表には出ないものもあるが、『あいちトリエンナーレ』はテーマともリンクした内容となっている。港千尋芸術監督が、テーマについて、そしてどのような芸術祭を目指したのか、熱い思いを聞かせてくれた。

「前回のテーマが、震災後の日本の現実をストレートに扱う“揺れる大地”だったんですね。これは『あいちトリエンナーレ』の特徴ですが明確で具体的なコンセプトを出し、それに対してチームが作られて芸術祭全体が出来ていくという、積み上げていく形だと思うんです。それは良い仕組みですし、3回目である今回も続けたいと思いました。芸術監督の役割で重要なのは、最初に提示したテーマを信じられるかどうかなんですね。準備段階から考えると今日までの2年半、それを信じて引っ張っていけるかどうか。そこがしっかりしていれば、多少のことがあっても揺らがない。逆に自分で信じられなければ、どこかのタイミングで何をやってるかわからなくなるんじゃないかと。そこでテーマを決めるにあたって思ったことがあります。私は80年代のはじめから世界を旅してきました。いろんな場所にいきましたが、最初に行ったのは、アマゾン河を船で下っていくという、南米大陸を1年かけた長い旅でした。その後、ヨーロッパ、アフリカ、ユーラシアなども周りましたが、その旅の中で、戦乱、革命、災害といった、日常が大きく変わってしまう出来事にも直面しました。そこでつくづく何が自分をここまで導いてきたかと考えると、やはりアーティストの姿だった。ひとつ例をあげますと、1991年の冬、旧ユーゴスラヴィアのサラエボという都市が長期間にわたって封鎖されました。物資も届かず、毎日のようにスナイパーの銃撃がありました。そんな中でもアーティストは活動していた。手書きの新聞を発行した人々がいました。ニューヨークをベースに活動していた劇作家、小説家のスーザン・ソンタグは、単身サラエボに乗り込んでサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』という劇を、電気もないようなところで若い役者と練習して上演しました。どんな状況でもモノを作る。表現を続けてそれを人と共有する。そのアーティストの姿に刺激を受けてここまできたんです。時代はそれから20年以上たち、大きく変わりましたけど、皆さんもご存知の通り、社会情勢の厳しさは増すばかりです。この時代において、しかし同じようにどんな状況にあってもたくましく、想像力と技術とチームワークで、表現を通して何とか希望を繋ごうとしてる。そういうアーティストが世界中にたくさんいる。そのことを伝えたいというのがわれわれの意図です」

日常に密接に関わる、“アート”に対する視点も変えさせられるような芸術祭。
まずは街なかをブラリとしながら、そこにあるアートに触れてみよう。

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