愛知の竹と土で“大地の囁き”を表現するヴァルサン・クールマ・コッレリ

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インドを拠点に活動するヴァルサン・クールマ・コッレリ(1953年インド・パティアム生まれ)は、天然素材を用いて大地のエネルギーを具現化している彫刻家だ。22歳からファインアーツの勉強を始め、これまで彫刻だけでなく絵画、インスタレーション、パブリックアート、建築、写真などさまざまな手法で“地球から吸い上げたイメージ”を表現してきたという。

「ずっと日本に来たかった」と言い、「港芸術監督が指名してくださって嬉しい。やっと夢が叶った」と、今回念願の初来日を果たしたのだ。息子のヴィシュヌさんと共に愛知に二ヶ月滞在し、来日当初は「瀬戸市新世紀工芸館」で陶作品の制作を行い、途中からは展示場所の「愛知芸術文化センター」10階と、12階の屋上庭園で制作を続けている。

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ヴァルサンはどの土地で作品を創る時もその土地の素材を使って制作するそうで、今回は豊田の竹と瀬戸の粘土、恵那の土を使用。インドの自宅にも竹林を作ったというほど竹好きで、「豊田の竹は、背が高く質も良くて嬉しい」とご満悦の様子。

作品は、この竹をテント状に組み、麻布を巻いた上から再生パルプのチップと恵那の土、糊を混ぜたものを塗り重ね、その内部には、瀬戸で制作してきたオブジェやアフリカ発祥の民族楽器「ウドゥドラム」を設置するという。

作品タイトルは、《バープ オブ ジ アース》。人間が捨てる物質を“地球に食べさせている”と解釈し、それによって出た地球のゲップや囁きを表しているというからユニークだ。前述の打楽器「ウドゥドラム」を鳴らしたりすることで聞こえてくる、大地の囁きを感じてほしい…というのが作家の意図なのである。

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報道陣への制作現場公開が行われたこの日は、実際の制作風景も披露。展示場所の10階、12階ともに屋外のため、炎天下にはお気に入りの麦わら帽子をかぶって制作しているよう。天候を心配する声が記者から上がると、「サイト・スペシフィックな作品(置かれる場所の特性を生かした展示)なので、雷雨などは受け入れるしかない。それに抗おうとすると別の問題が起きます。24時間雨が降り続けなければ溶けません」と、ヴァルサン。また、年齢を問われると「紀元前に生まれて、金属が溶けるまで生きています」と答えるお茶目な一面も。

果たして、大地の囁きを感じ取ることができるか否か、会場でぜひ体感を!

TEXT:望月勝美

 

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