「アニマル・レリジョン」キム・ジロン来名港監督と対談形式で会見

キム・ジロンさん(右)と港千尋芸術監督 01


豊橋公園で野外パフォーマンス「チキン・レッグズ」日本初演

6月2日、スペインから参加するパフォーマンス・カンパニー「アニマル・レリジョン」のキム・ジロンさんが、愛知芸術文化センターで会見を開いた。

今回が初来日上演となるアニマル・レリジョンは、ジロンさんとニクラス・ブロンベリさんを中心にスペイン・バルセロナを拠点に活動するカンパニー。ブロンベリさんはアクロバット、タップダンス、ジャグリング、マジック、ピアノ、作曲などを手掛け、ジロンさんはサーカス学校出身でクラウン、パーカッションのほか、天文学や動物の動き等に着想を得た研究を行うなど、2人の表現活動は幅広い。同カンパニーは現代的サーカスにダンスと音楽の融合を図りながら、動物の本能や宗教に触発された作品を創作しているという。

作品について語るキム・ジロンさん 01

あいちトリエンナーレでは豊橋公園を会場に10月8日~10日、パフォーマンスを行うことを発表。2014年にスペイン・カタルーニャ州の農場ほかを会場に上演して高い評価を受けた「Chicken Legz(チキン・レッグズ)」の日本初演。カンパニーのメンバー11人が出演し、人間と動物と機械によるアクロバティックでスペクタクルな空間を演出する。

アニマル・レリジョン
アニマル・レリジョン『Chicken Legz』 2014 提供:Animal Religion


キム・ジロンさん「豊橋公園という場所について語る」

会見はジロンさんと港千尋芸術監督の対談形式で行われた。

――港監督 とてもユニークなカンパニーですね。こういった活動に至った経緯を教えてください。

――ジロン 僕は最初にスペイン・バルセロナで舞台芸術を学んだ後、フランス、スウェーデンでサーカスに取り組みました。カンパニーは、スウェーデン・ストックホルムのサーカス学校でニクラスと共に創設しました。その学校は少し変わった特徴があって、現代サーカスとダンスの両方に特化していました。全てのアーティストの表現にオープンな場で、僕のモチベーションはサーカスに変革を起こしていくことにあると思うようになりました。カンパニーを創設してから5つの作品を上演しましたが、全ての作品に共通しているのは動物的な要素を含んでいることです。その部分が大きなインスピレーションをカンパニー自体に与えています。

――港監督 ヨーロッパのサーカス学校について教えてください。

――ジロン ヨーロッパの傾向としては、サーカスの分野ではフランスが一番重要視されています。ただ、全てのアートと同様、伝統的なもの、現代的で実験的なもの、さまざまなスタイルがあります。教育はシアターとダンスが織り交ぜられ、行われています。

――港監督 アニマル・レリジョンは実験的なスタイルのカンパニーだと思いますが、農場以外ではどんな場所でやりましたか。

――ジロン 3作品は通常の劇場で上演しました。2作品は劇場外です。「Chicken Legz」はフェスティバルの内容に合ったものを作ってほしいという依頼で制作しました。自分たちの中でもユニークなサイトスペシフィックな作品です。通常の作品は劇場内の四角いスペースで番号の付いた椅子に座って鑑賞しますが、本作は観客自体が単なるオブザーバーではなく、能動的、アクティブな主体として作る側に参加する形態です。

対談するキム・ジロンさん(右)と港千尋芸術監督 01

――港監督 下見した豊橋公園の印象はいかがでしたか。

――ジロン 豊橋公園はとてもオープンな場所という印象。まるで森の一部のようで、気に入りました。会場の背景の一部として城が見えて、川がすぐそばにあり、堀に囲まれている。守られていた特別な空間だと感じました。今回はスペインで上演されたものとはひと味違う作品になるでしょう。半分ほどは初演で作られているものを踏襲しますが、半分は豊橋公園という場所について語る、場所に密着した内容になると思います。

――港監督 スペインとはまったく違う風景なのですね。まったく違う環境でどんな新しい作品が出来上がるのか。少しアイデアを話していただけますか。

――ジロン 一般的な情報しか無い現在の時点では、少し難しいのですが。実際にその場所で何時間も過ごす必要があり、メンバーと一緒にワークをして面白い要素を抜き出す作業をしなければいけません。木を使うこと、会場の高低差を利用することは、やると思います。入場して会場を進みながら、最終的な部分ではギリシアの半円形の劇場に降りていく感覚を起こすような印象につなげたいですね。

――港監督 とても楽しみです。カンパニー名は日本語にすると「動物・宗教」でしょうか。通常、ヨーロッパでレリジョンという言葉は人間の知的な活動や精神生活のことであって、そこにアニマルという言葉はつながりません。動物が宗教を持つのかどうか分かりませんが、どういった考えが背後にあるのでしょうか。

――ジロン 自然というものは神もしくは宇宙が与えた素晴らしいエネルギーを持っています。僕自身は人間であり、動物でもあると思っています。人間はいつも理由づけを行っています。アーティストとして、理由を探すことに集中するのではなく、動物的な部分を活発に表現に生かしていきたいと思っています。

――港監督 公演が行われる10月は刈り入れの時期で日本中の神社で奉納のお祭り、芸が行われます。日本の自然と芸術の関係を見る一番いいタイミングかも知れません。日本の自然に触れながらの滞在制作で、ジロンさんたちにインスピレーションがあればいいなと思います。

――ジロン 今から収穫の時期に靴を脱いで米の収穫を手伝うのが楽しみです。若いカンパニーである僕たちに、日本の文化を知ることができる滞在制作の機会を与えていただき、とても感謝しています。日本でこの作品を新しく作り直したい。早く制作を開始したいですね。

ジロンさんは今回の下見を基にスペインに帰国後、構想を練る作業に入り、9月25日ごろにメンバーと共に再び来日。豊橋市内で約2週間をかけて滞在制作をするという。

TEXT:竹本真哉

  

サイドナビ